こんにちはIMULTA(イムルタ)の上谷です。
独学で彫金を始めて15年たちまして現在はIMULTAという自分のブランドを立ち上げて彫金師をやっています。
シルバーの種類についてのお話が意外に好評だったようなので似たような話をしてみたいと思います。
業者様などでお仕事の依頼などは下のアドレスからお問い合わせください。コメントからでも結構です。
銀(シルバー)
私が彫金師として一番使用している頻度の高い金属です。
以前のブログで書きましたがsilver925・silver950などで種類が分かれており加工のしやすい金属です。
詳しい内容ついては過去のブログをご覧ください。
シルバーはそこらへんにむき出しで放置していると酸化・硫化して劣化していくのでチャック付きのビニール袋に入れて保管しましょうね^^
お手入れは東急ハンズとかで売っている銀磨き用のクロスで磨けば日常的なお手入れは問題ないです。
多分家の近くのホームセンターにも500円くらいの研磨クロスはあるはずです、一枚持っておいて損はないですよ。
「浸け込むだけでしっかり汚れを取りたいわ。」っていう方はこれを使いましょう。
沈めちゃいけない宝石もあるのでしっかり商品説明ページを読むかメーカーに問い合わせるかしてください。
東急ハンズにも置いてあります。
入れ物の後ろに浸け込んじゃいけない宝石や金属についてちゃんと書いてあるので確認しましょう。
一時期ハンズで実演販売してたぐらいの商品です、多分今もあるはず。
ちなみに純銀は思っているより白っぽいです。
研磨していると鏡面仕上げでピカピカなので白っぽくは見えませんが、アンティークショップにガチのシルバーカトラリーを見に行くでもしないと普通はお目にかからないと思います。
彫り入れの感覚
彫りを入れる時の感覚で言うと、状態にもよりますが他の金属より柔らかいです。
そのため手元がぶれるとすぐに線がゆがむので彫りの難易度は高めです。
ただ陰影をつけた際の表情が出しやすいので慣れてくると彫っていてかなり楽しいです。
私の彫りは和彫りという日本の彫金技術ですが平面に立体的な絵を彫り込んでいくのに多分銀が一番向いてます。
シルバーは彫り初心者の練習には向いてないと断言できます。
シルバーには硬い状態と柔らかい(なましてあるorキャスト後の)状態があります。
アクセサリーやジュエリーにする時はロウ付けなどで火を当てる工程が終わって、最後に彫るので基本的に柔らかい状態で彫る事になるため難しいです。
特に柔らかい金属だと慣れないうちは曲線を彫る時にタガネの刃先が金属の中に潜り込んでいってしまってうまく彫れないという事があるので、まずは硬い金属で練習した方がどのようにタガネを動かしたらいいかという感覚が養えます。
さらに言うと慣れないうちは柔らかい金属の方がタガネ欠けやすいです。
「銀板で練習した方がいいよ~。」って人もいると思いますが、
コスパ悪いうえに、上達が遅くなるので【絶対】やめた方がいいですよ。(超実体験)
私は銅と真鍮で練習してきましたがちゃんと仕事を受けて彫ってます。
このzippoもシルバーですが問題ないですね。
もし柔らかいものも彫れるようになりたいという事でシルバーでやるならばsilver950の方がsilver925よりも安価なので練習に向いています。
金(ゴールド)

彫金18金リング
言うまでもなく世界的&歴史的に使われている装飾品の素材です。
身に着ける事がステータスになりますし、今はスマホの部品にも使われているので今ではレアメタルに入ってますね。
今後は値段が上がりっぱなしなので買っておくといいですよ。
金は放置していても空気中での劣化はしにくいので意外と管理は簡単です。
※注:【劣化しにくい】です、雑に使っていれば放っておくだけで汚れます、人間の脂で汚れるので着けた後は最低限布とかで拭いた方がいいです。
「やっぱり浸け込むだけでしっかり汚れを取りたいわ。」っていう方はこれを使いましょう。
純金(24金)は思っているよりも黄土色です。
インド近隣の国の方はお守り的な要素とステータス&文化として皆さんジャラジャラ着けてますね。
うちの近所のカレー屋さん(多分インドの方)もメッチャ着けてます。景気がいいですね~。
金の純度によって色合いが全然違うので好みが分かれますが、最近は14金アクセサリーが流行ってるっぽいですね。
個人的にオススメなのは18金アクセサリーです、日本人の肌の色に一番合います。
知り合いのスリランカ人の方が言ってました。
彫り入れの感覚
彫金で彫りを入れる難易度は一番高いです。柔らかいので。
手元のブレで変な跡を入れてしまうとその後のお掃除がめちゃ大変です。
銅(カッパー)

銅板への試し彫り
直接肌に触れるところに使うと高確率でアレルギー反応が出るので私はアクセサリーには使いません。
ちょっと検索すればわかることですがアレルギー反応を起こしやすい金属の代表格です。
よってアクセサリーやジュエリーにはほとんど使われず、合金の割金として使用されます。
●割金って?
→銀や金の強度を上げるために混ぜ込まれる金属のことです。わかりやすく例えるとジントニックのトニックですね^^
銅はそのまま肌につけると汗と反応してアレルギー反応が出るので
銅のアクセサリーは肌に接する部分は銀がロウ付けしてあったりします。
またはメッキなどして色味を強めたりしたうえでアレルギー反応が出ないように加工がされています。
銀と金もアレルギー反応が出る可能性はあるのですが銅はケタ違いにアレルギー反応が出る可能性が高いので、彫金のアクセサリー・ジュエリーで銅は使いません^^;
※最近は「緋銅」という古来伝統の加工をした銅を使用してアクセサリーを販売している方もいますが、私は緋銅にかんして知識がないのでわかりかねます。
アレルギー反応を抑えるような加工でもしてあるのでしょうか?
一度、途絶えた技術なので「これが絶対緋銅です!!」というのは無いはずです。
彫り入れの感覚
銅板は彫りの練習でものすごい使います。
研いだ後の試し彫りは欠かせないので彫りの作業の前に必ず銅板に彫ります。
彫りの難易度は低め、硬いので彫った跡がパキッと出ますし線がぶれることもまずないです。
彫りの練習には一番向いてます。
彫金はうまく彫れなかった時にバリ(ささくれみたいなもの)が出て、彫って切り飛ばせずにベロンとめくれた状態になります。
バリはある程度は出ても処理できるので問題ないのですが、銅ぐらい硬い金属でバリが出るようでは銀は金ではまずちゃんと彫ることはできません。
もし自分でタガネを研いで彫金の練習をしているのであれば研いだばかりのタガネはバリが出やすいのでその調整もかねて最初に銅板で試し彫りをするのがポイントです。
後は型取りする時の原型を使うのにも銅はよく使います。
●型取るのはワックスで作るんじゃないの?
きれいな平面を出すなら金属板から作った方が簡単です。
ワックスの場合型取りの時に破損して作り直しってこともあるので金属で作るのが私は好きです。
デザインによって使い分けてます。立体的で厚みがあってところどころ抜きなどの細かいデザインが入るものはワックスでやります。
真鍮(ブラス)

真鍮リング「リムール」
実は真鍮という金属はなくて銅と亜鉛の合金の名前です。黄色い金属で五円玉とかに使われています。
金管楽器のバンドをブラスバンドといいますがこのブラスは真鍮のことです。
最近は真鍮を使ったアクセサリーが増えているようです。
お手入れとしてはほったらかしにしていると青錆が出てきてしまうのでちょこちょこ磨かないとだめです。
ピカピカの状態をキープするのは一般の方には多分無理ですので金メッキされたものを買うのがおすすめです。
長く使って経年変化の味を楽しみたいという方はメッキされていないものを定期的に磨くなどしてお手入れしましょう。
少なくとも1週間に1回は磨いた方がいいです、本当は3日に1回がおすすめです。
真鍮ブラシを使うとお手入れにとても便利です。←この方法は頑張りすぎると逆に黒ずみます。
東急ハンズとか、なんだったらホームセンターで売ってます。
ピカピカに鏡面研磨するのは無理ですけどね。
最近のハンドメイドブームもあって自分で作ってみたい方が増えているという事なので
作り方を紹介しています。
よくある鎚目のリングを真鍮の板の状態から作る工程を紹介した記事です。
少し工程を増やして製作方法を紹介しています。
火を使う工程もあるので自己責任でお願いします。
彫り入れの感覚
彫金としては彫りを入れるのは結構大変です、難易度が高いというよりも硬いので刃がなかなか入っていかないです。
さらに合金の出来にムラがある時は彫ってる途中にいきなり割れたりします。(これは鋳物やアンティークの真鍮アイテムに該当する事なのでそこまで頻度は高くありません。)
余談:キャスト
真鍮でキャストをお願いしてバレル研磨もかけずにピンク色の状態で納品してくる所はレベルが低いので依頼しない方がいいです。
ちゃんとしたところは真鍮の場合はバレル研磨がもとからセットになっているので言わなくてもやってくれます。
キャストのクオリティは本当にピンキリなんで納得いかないところは二度と使わないようにしましょう。
メッキ
さてここからメッキについて書きます。
昔から「メッキが剥がれる」なんて言葉があるせいか悪いイメージがあるようですが、最近のメッキの技術はすごいのであんまり悪いイメージがあるのもなんかなーって感じです。
そもそも前提としてメッキは鍍金と言ってものすごい昔からあります。
古代中国の王様の墓から出土した銅剣も金メッキでしたね、まぁそれは歴史オタクっぽい話になるので置いておきます。
その目的は耐久性を上げる・腐食から守る・変色しないようにする。というのが目的です。
私は彫金の仕事上メッキはロジウムメッキと金メッキしか使わないのでその2つについて書きます。
ロジウムメッキ
わかりやすく色で言うと銀色のメッキをかける加工です。色的には少し重めの銀色になります。
ロジウムメッキはそのまま表面にロジウムを付着させるメッキで、メッキが剥がれない限り変色せずに強度が上がります。
頑丈さではクロムメッキというメッキが上になりますがこれは工業製品などに使われるので貴金属のメッキにはあまり使われないです。
ポイントは変色に強く頑丈になることです、ちなみにわざと削って剥がそうとしない限りちゃんとしたところでやれば最近のメッキはめったに剥がれることはありません。
シルバーアクセサリー・ジュエリーの製作の途中では「ロウ付け」という工程でパーツを接合していくのですがシルバーでロウ付けする場合「銀ロウ」という融点の低い金属片を使います。
ロウ付けした部分は他の部分と表面の状態が違うので長く使うとそこから変色していきますのでそれを隠すようにするためにロジウムメッキを使ったりします。
他には最近の銀食器(テーブルウェア)でも一般的に使われています。お手入れが大変ですからね…
私の彫金の作業に直結する部分では彫りを入れた溝の部分は一般の方でお手入れするのはまず不可能なので
そもそも汚れが入らないようにメッキする時があります。
頻度としては低いですがご希望があった場合は別途料金をいただいてメッキ処理しています。
金メッキ
18金メッキなどがありましてこちらは基本的に金色の色味を持たせるために使用されることがほとんどです。
たまにネット商品の表示などで18KGPという表示をしている商品がありますが
これは「18カラットゴールドプレーテッドまたはプレーティング」と読みます。簡単に言うと、金メッキのことですね。
金メッキは実際の18金・14金の色味に合わせたメッキができるのでとても便利ですし実際の金商品に比べればはるかに安価で購入できます。
ただ多少布で磨くぐらいの研磨しかできないので長く使うのは難しいかもしれません…。
最近は商品の一部分のみを金メッキして色味に変化を持たせたアイテムも増えてきてますね。
真鍮のアイテムだと細目に磨かないと最悪青錆が出てくるのでめんどくさい方は金メッキしたものを選んでください。
まとめ
今回はザックリとですが彫金やアクセサリー作りで使われる金属の特徴などを紹介しました。
どういった目的で使うかによって向いてる金属が変わってきます。
特に「読む彫金教室」コーナーでは真鍮を題材にすることが多いですが、
- 作ったあとに自分でつけれる
- アレルギー反応が銅よりは出にくい(※出ないとは言ってない)
- コスパがいい
- くすみやすいのでお手入れ方法を覚えられる
この4点から真鍮を使用しています。
この記事内でも書いてますが彫りの練習に一番向いているのは「銅」なので彫りだけやりたい人は銅板の使用をオススメします。
IMULTA(@imulta_jewelry)でした。
IMULTAショップ
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↑私は普段このように金属に模様を彫り入れるオーダーも承っています。
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・真鍮アクセサリーの作り方
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