インド装飾のカラーストーン使い
インドの宝飾では、色石(ルビー、エメラルド、サファイア、スピネル、真珠など)が金細工と結びつき、多様な意匠を形成してきました。
ムガル時代(16~18世紀)には、金地に色石を密に配した装飾や、裏面にエナメル(ミーナーカリ)を施す構成が確立し、以後のインド宝飾の基盤となり、実例として、金地にルビー・エメラルド・ダイヤモンド等をクンダン技法で留めた装飾品が各館に収蔵されています。
インド装飾の技法:クンダン(Kundan)とミーナーカリ(Meenakari)
クンダンは純度の高い柔らかな金(24金)を用いて、地金に彫りを入れず“はめ殺し”状に石を固定する伝統的な石留め技法で、ムガル宮廷の宝飾と密接に結びつきます。
ミーナーカリ(エナメル)は金属面にガラス質を焼き付けて色面を作る技法で、ムガル期以降、表の色石と裏面の色彩(エナメル)を併置する意匠が一般化しました。
これらは現在もムンバイやジャイプルの工房で継承されています。
ポルキ(Polki)と色石の併用
ポルキは平坦で未加工に近い古いスタイルのダイヤモンド(フラットカット/ローズカット系)を指す呼称で、クンダン‐ミーナー系の装飾で用いられてきました。
色石(特にエメラルドやルビー)と併用されることが多く、婚礼向けセット等の主要要素として位置づいています。
インドの代表的な色石と造形
ムガル~近世インドの宝飾では、ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、真珠などが頻用されました。
器物や装身具においては、金地にクンダンで石を配し、裏面にエナメル文様を加える例や、硬石(ロッククリスタル・翡翠)に金象嵌と色石を組み合わせる例があります。
メトロポリタン美術館の館蔵品のキャプションからも、石種の組み合わせと技法の併用が確認できます。
特にエメラルドは、ムガル期に大判のビーズや板状石が好まれ、花文様などの陰刻(カービング)が行われており、いくつかの作品はコロンビア産の原石がインドに渡って加工・流通した経路が、美術館の解説で示されています。
コロンビアは現在でもエメラルドの産地として有名です。
スペインが南米を征服した際に大量にスペインに持ち込まれヨーロッパに流通しました。
その結果ポルトガルのマカオやゴアを拠点にした貿易でインドにも流通しました。
カラーストーンの地域産業:ジャイプルの色石産業
現代インドでは、ラジャスタン州ジャイプルが色石の研磨・取引・製作の主要拠点の一つとなっています。
宝石学機関の現地調査は、ジャイプルがエメラルド加工・流通において国際的な中核である点や、同地が多様な色石加工の集積地である点を報告されています。
18世紀のムガル帝国が衰退した時期に、多くの宝石職人がジャイプルに移住し、王侯貴族が積極的に庇護したため宝石都市として現在でもその文化産業が続いているという歴史があります。
これはイギリスの植民地時代にも王侯貴族がパトロンとして保護したため技術の継承が途絶えませんでした。
占星伝統と「ナヴァラトナ(九宝)」
インドの占星術(ジュョーティシャ)では、九つの天体(ナヴァグラハ)と特定の宝石を結び付ける伝統があります。
宝石と天体の関連づけが古典文献(例:Ratnaparikṣa)に遡ること、九宝(ナヴァラトナ)の組み合わせが護符的文脈で用いられてきたことを示します。
ナヴァラトナの組み合わせとしては、一般に ルビー・真珠・赤珊瑚・エメラルド・黄サファイア・ダイヤモンド・青サファイア・ヘソナイト(ガーネット)・キャッツアイ(クリソベリル) が挙げられ、これは「占星伝統上の対応関係」として示されるものです。
インド装飾の模様と色彩の構成
色石の色相(緑=エメラルド、赤=ルビー、白=真珠、無色=ダイヤモンドなど)は、幾何学・草花文の構成と組み合わされます。
クンダン留めの表面に対し、裏面のミーナーカリ(赤・緑・青など)の色面で全体の調和をとる例が多く、宮廷工房の伝統に基づく作品では、左右対称や反復パターンが一貫して用いられます。
カラーストーンの用途と媒体
用途は、首飾り・耳飾り・腕輪・額飾(サルペシュ)などの装身具に加え、刀装具・服飾付属や器物(杯・小箱)に及びます。
例えば、ロッククリスタル製カップに金象嵌と色石を配した器物や、ターバン・オーナメントにエメラルドとダイヤモンドを組み合わせる例がメトロポリタン美術館コレクションに確認できます。
近代以降の受容
19~20世紀には、欧米の宝飾商(例:カルティエ)が、インドにもたらされた大粒のエメラルドなどを再装飾(リマウント)して欧米市場に流通させた事例がある。
まとめ
- インド宝飾におけるカラーストーンは、クンダンとミーナーカリを核とする宮廷工房の技法、ポルキの採用、幾何学・草花文との組み合わせによって体系化された。
- エメラルド・ルビー・ダイヤモンド・真珠などの組み合わせは、ムガル~近世の作品群で継続的に確認できる。
- 産業面ではジャイプルが色石加工・流通の主要拠点の一つとして機能している。
- ナヴァラトナは占星伝統に基づく宝石の組み合わせであり、文化史・信仰史上の位置づけとして理解するのが適切である。
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