2025年6月21日、日本国民の家計に重くのしかかる「ガソリンの暫定税率」を廃止しようとする法案が、最終的に参議院で廃案となりました。
この法案は、与党の自由民主党による衆議院財務金融委員会での審議拒否が原因で、参議院での採決に進んだ異例のケースでした。
最終的には過半数を占める与党の反対多数により否決され廃案となりました。
しかし、注目すべきは廃案そのものではなく、この法案が国会でどのように扱われたかという経緯にあります。
国民に密接に関わる税制度の見直しにもかかわらず、適正な審議すら行われなかったという事実は民主主義の根幹に関わる深刻な問題をはらんでいます。
■ ガソリン暫定税率とは?なぜ問題視されてきたのか
ガソリンにかかる税には、大きく以下の3種類があります。
- ガソリン税(本則税率):28.7円/L
- 暫定税率(上乗せ分):25.1円/L
- 消費税(上記合計額にもかかる)
暫定税率とは本来、1974年のオイルショック後の道路整備を目的に、時限措置として導入されたものです。しかしその後、道路特定財源の一般財源化などを経て、今日では事実上の恒久税化しています。
現在でもガソリン1リットルあたり約53.8円もの税が課されており、その上にさらに消費税10%がかかります。これは「二重課税の構造」とも批判されてきました。

■ 法案提出の背景と衆議院での審議拒否
2025年に入り、原油価格の高止まりや物価高騰を受け、維新・立憲など複数の野党が「暫定税率を廃止し、家計負担を軽減すべき」として法案を提出しました。
ところが、自民党所属の井林辰憲議員が委員長を務める衆議院財務金融委員会では、審議そのものが拒否されました。
この「審議拒否」は国民が選んだ議員たちの間で議論する機会すら奪ったという点で、制度上極めて重大な問題です。
結果、審議が参議院に直接持ち込まれる形となりましたが、最終的には否決され、廃案となりました。
■ 委員長の解任と憲政史上の異例事態
審議拒否に対しては、2025年6月18日、自民党の井林たつのり財務金融委員長が衆議院で解任されるという事態にまで発展しました。これは現行憲法下で初めての委員長解任とされており、国会運営における異常事態として記録されるべき出来事です。
これは、議論を拒否する姿勢そのものが民主主義の否定であるという認識が、一定の形で共有された結果といえるでしょう。

■ ガソリン税問題はこれで終わりではない
法案は廃案となりましたが、ガソリン暫定税率をめぐる問題は依然として未解決のままです。
- 「暫定」と言いながら半世紀続く制度
- 一般財源化により使途の透明性が失われている
- 暮らしに直結するにも関わらず、議論を避ける姿勢
このような構造が、今の政治に対する不信感を強めているのではないでしょうか。
ガソリン減税潰しから見える政治の実態
今回の一連の流れは、単なる法案の否決以上に、
- 国会で何が起きているのか
- 審議拒否という非民主的手法がまかり通る実態
- 政治家が誰のために動いているのか
上記の内容を私たち国民に突きつける出来事でした。
今回の法案が廃案になったからといって、私たちの声が届かなかったわけではありません。
事実、委員長の解任という動きが現れたことは、民主主義が完全に機能不全に陥っているわけではないという証です。
今後も私たちが主権者として、声を上げ、注視し続けることが必要です。
公僕である政治家がどのような発言をしてどのような結果を出してきたかを見つめましょう。
与党もかつては「ガソリン減税」を掲げていたという矛盾
ガソリンの暫定税率を廃止、あるいは見直すという政策は、過去に自民党・公明党の両党が選挙公約として掲げていたものです。
たとえば:
- 自民党は2008年のリーマンショック直後の物価高対策として「暫定税率の見直し」を掲げ
- 公明党も地方負担とのバランスを考慮しつつ、「生活を支える減税」の一環としてガソリン課税の再検討を訴えていた時期があります。
つまり、国民に対しては「減税」「見直し」を訴え、選挙を勝ち抜いたにもかかわらず、実際の政策判断においては反対に回ったというのが今回の事態の構図です。
2025年6月時点のX(旧Twitter)においてガソリン減税をすると公式に発信しておいて反対に回り減税案を潰したというのは絶対に忘れてはいけません。
これは有権者にとって、「政治が信用に足るものなのか」「選挙公約とは何なのか」という根本的な疑問を呼び起こす事態であり、自民党政権への信頼を大きく損ねかねないものです。
「7月1日からの廃止は混乱を招く」という主張の欺瞞
参議院での議論の中で、自民党の小林鷹之議員は、ガソリン暫定税率の7月1日からの廃止について「現実的でなく、流通現場に混乱をもたらす」と主張しました。
これには多くの国民が不振を抱き大きな批判を生みました。
この発言にはいくつかの大きな矛盾があります。
ガソリン価格は日々変動している
ガソリンの小売価格は、国際的な原油価格・為替レート・地域の競争環境などに応じて日々変わるのが通常です。
実際、全国平均価格も週ごとに発表されており地域差もあります。
つまり税率変更に伴う価格改定が「混乱を生む」という指摘は、すでに日常的に変動している市場の特性を無視した、実態とそぐわない反論です。
たばこ税や酒税なども「○月○日から」普通に切り替えられている
他の間接税、たとえばたばこ税や消費税なども、特定日からの改定が過去に何度も行われています。店舗側は旧税率・新税率の仕入れ管理や在庫区分を行い、通常通り対応してきました。
「混乱を招くからできない」というのは、単なる政治的回避策であり、本質的な反論ではありません。
■ 「選挙前のパフォーマンス」という麻生太郎氏の発言の欺瞞
参議院での法案審議をめぐって、自民党副総裁・麻生太郎氏は「野党の選挙前のパフォーマンスに過ぎない」と発言しました。
しかしこの発言には、少なくとも3つの点で致命的な矛盾と問題があります。
① 自民党もガソリン減税を「やるべき」と明言してきた
かつて自民党自身が、選挙公約や党内議論で「ガソリン価格の高騰対策が必要だ」「減税やトリガー条項の発動も選択肢」と繰り返してきました。
にもかかわらず、いざ野党が具体的な法案を出すと“パフォーマンス”と切り捨てるのは明らかに筋が通りません。
② 「選挙前」というタイミングこそ、有権者に対する姿勢が問われる
仮にこれが“選挙前の法案提出”だとしても、それは有権者に政策判断を仰ぐ健全な民主主義の在り方です。
むしろ、こうした生活に直結する政策こそ、選挙前に提示して「どの政党が実際に暮らしを良くしようとしているのか」を示すべきであり、その試みを“パフォーマンス”とレッテルを貼ること自体が、政治不信を生む要因でしょう。
ただそのパフォーマンス一つで野党のすべての野党の評価が良くなるわけではありません。
厚生年金を流用する法案を通した立憲民主党や予算案に賛同して減税を潰した維新の会の評価はまったく変わらないでしょう。
③ 「やらないこと」の方が信用を失う
国民から見れば、「物価高で苦しむ中、実効性ある政策を出さず、反対するだけの与党こそ“信用を失う行動”」です。
この局面で求められていたのは「法案の中身への建設的な提案や修正」でした。
それを行わず、「パフォーマンス」と言って蓋をしてしまう姿勢は国民にどのように映るでしょうか。
■ 結局、誰のための政治なのか?
麻生氏のような大物政治家がこうした発言を平然と行う背景には、“やらなくても支持される”という慢心があると見る向きもあります。
しかし、それはもはや民意を代表する政党の姿勢ではありません。ガソリン税のように「生活そのもの」に直結する政策こそ、党派を超えて真剣に議論すべき課題です。
この発言をきっかけに、私たち一人ひとりが「誰が本当に暮らしを見ているのか」を見極める必要があります。
2025年7月20日の参議院選挙は必ず投票に行きましょう。