2025/04/29現在、食料品の消費ゼロについて話題です。
立憲民主党がこれを掲げ、維新の議員なども追随しています。
実際にいい事かどうかを確認しておきましょう。
そもそも食料品にかかる軽減税率(8%)などの前提を整理しつつ考えてみましょう。
軽減税率とは?ゼロ税率とは?
軽減税率とは、特定の品目(日本では主に食料品や新聞)に対して、 通常の消費税率より低い税率(現行では8%)を適用する仕組みです。
これにより、生活必需品の負担を軽減しようという目的があります。
一方、ゼロ税率とは、対象品目に対して消費税をまったくかけない仕組みです。
消費者から見れば「消費税がゼロ円になる」わけですが、 事業者側から見ると話は少し複雑です。
ゼロ税率(食料品の消費税ゼロ)
- 売上には消費税ゼロ(=消費者に請求できない)
- 仕入れには通常通り消費税(10%)がかかる(食品の仕入れは消費税ゼロになるが電気代の経費などは消費税10%のまま)
- この差額を税務署に申告し、還付を受ける仕組みが必要
つまりゼロ税率は、単なる「負担ゼロ」ではなく、 事業者にとっては還付を前提とした制度なのです。
【影響整理】小売・飲食・生産者それぞれの影響
小売(スーパー、食料品店など)
- 売上に消費税を上乗せできなくなる
- 仕入れには依然として10%の消費税がかかる
- 還付申請ができるが、手続き負担が増加
- 資金繰り(仕入れ代金支払い→還付までのタイムラグ)が悪化
まだ還付の制度内容に関しての議論もしていない状態で「還付があるから大丈夫。」と言っている方は正直楽観的に過ぎだと言えます。
問題点はまとめて後述しています。
飲食店
- もともと飲食業は軽減税率対象外(現行10%)
- ゼロ税率対象外である限り影響なし。ただし世論圧力として「食材はゼロなのに外食は高い!」と叩かれるリスクあり
- 原材料(食材)の仕入れ価格の変動が読めなくなる可能性
生産者(農家・漁業者・食品加工業者)
- 仕入れ(肥料・飼料・燃料など)はすべて10%のまま
- 自分たちの販売物(食料品)はゼロ税率
- 結果として資金繰りが悪化する
- 特に小規模生産者ほど還付の手続き負担が大きい
- ゼロ税率を理由に価格引き下げ圧力を受けるリスクも大
【問題点整理】資金繰り・還付スキーム・値下げ圧力
資金繰りの悪化
ゼロ税率では売上に消費税を載せられないため、 一時的に仕入れコストだけが先行する構造になります。
特に中小・零細の事業者にとっては、 還付を受けるまでの資金繰りを耐えるのが極めて厳しくなります。
筆者だったら還付をちゃんと受けられるか不安なので絶対に価格は下げませんし可能であれば上げます。
還付する際の体制の不安定さ
制度設計次第なので何とも言えませんが最近の政府のグダグダ具合だと食品ではありませんが商売やってる側からすると還付がちゃんとされるかかなり不安です。
- 還付に時間がかかる
- 還付金額が制限される
- 還付の審査が厳しくなる などのリスクが高いです。
特に初期段階では、運用ミスや制度不備により “還付難民”が続出する可能性も考えられます。
還付されるから大丈夫と言う人がいますが還付が受けられるのは確定申告が終わった後に何か月または1年ぐらい経って申請が認められた時だけですからね。
値下げ圧力の発生
消費者側から見れば「食料品は消費税ゼロなんだからもっと安くできるでしょ?」という 値下げ要求圧力が強まります。
しかし、生産者や販売者のコスト構造は変わりません。
- 利益率が低下
- 廃業・倒産リスクが上昇
- 最終的に国産食料品供給が細る
これらの悪循環に繋がる可能性があります。
立憲民主党などの議員が「仕入れが安くなる」とひたすら発信しているのもこの世論を作り出す一因になっています。
立憲民主党は自分たちの主張を正当化するためにこぞって問題ないと言ってますがそれ自体がまずいです。
スーパーで買い物したことがある人はわかると思いますがほぼ毎日に近いぐらい野菜の値段は頻繁に変わりますよね。
それに比べてラーメン屋や牛丼屋の店頭価格はめったに変わりません、これは客離れを防ぐためです。
つまり仕入れ価格は簡単に上がるのに販売価格は変えられないのでさらに利益を圧迫することになります。
食料品の消費税0で仕入れ価格が下がることは考えられないのか?
残念ながらまず下がることは考えられません。
頑張って価格の据え置きが現実ラインでしょう。
先ほどのスーパーを例にした場合キャベツが旬の時期に安くなるように仕入れ値も安くなるだろうと感じると思います。
もちろん可能性はゼロではありません。
しかし「価格を下げる義務・下げなくてはいけない理由」がありません。
納入する業者も営利企業である以上利益を出す必要があり、今後価格を上げなくてはいけない状況を考えた場合値段を下げることは考えにくいです。
また仕入れ値が上がる要因というのが多く考えられます。
先ほどのキャベツで言うと2024年の雨不足の影響で大不作となりキャベツがひと玉500円を超えました。
X(旧Twitter)で大騒ぎになったので覚えている方も多いと思います。
またこれから先のことを考えると2025年の5月から再エネ賦課金で電気代が明確に上がります。
ガソリン税に関しても補助金で10円下がるという事ですが今後またガソリン価格が上がるのではないかと考えた時に値段を下げようという考えに至る経営者はまずいません。
つまり生産コストも運送コストも、ますます上昇するという事です。
このように仕入れ値が上がる要因の方が多く仕入れ値を下げるための要因が少ないので、消費税をゼロにしたから仕入れ値がその分下がるだろうというのはあまりにも楽観的な考え方です。
飲食店は仕入れ税額控除が一部しかできず、負担を丸抱えすることになる
食料品の消費税ゼロが実現した場合、外食産業(レストランやカフェなど)は非常に厳しい立場に置かれます。
おそらく実際に導入するのであればここに何らかの補助が入るはずです。
なぜなら、飲食店は「サービス提供」にあたるため、本来は標準税率10%を売上に上乗せして受け取っています。
この売上にかかる消費税をもとに、仕入れ時に支払った消費税を控除(差し引き)できる仕組みが「仕入れ税額控除」です。
しかし、もし食材がゼロ税率(消費税0%)になった場合、次の問題が起きます。
- 食材を仕入れる際には、これまで通り10%の消費税を支払う(例:野菜、肉、魚など)
- しかし料理を提供して得た売上には、これまでのような10%の消費税を上乗せできない(食料品部分はゼロ)
- その結果、仕入れにかかった消費税を控除する「元となる売上税額」がなくなり、電気代などの経費の消費税分を除いた仕入れの消費税分を丸抱えする形になる
つまり、負担だけが増え、還付や控除を受ける道もないという構造になるのです。
特に飲食店は、原材料費が売上の大部分を占める業種です。
この負担増は小規模な店舗や個人経営の店にとって死活問題になるでしょうね。
さらに、消費者側からは「食材はゼロ税率なんだから、外食も安くすべきだ!」という値下げ圧力が強まる可能性もあるので最悪でしょう。
消費税の払い先が仕入れ業者から税務署になるだけじゃないの?
数字の上ではそのようになります。
ただ商売していてその負担が飲食店に一点集中するので負担が大きくなって経営が傾く可能性が高いです。
簡単言うと資金繰りがめちゃくちゃ苦しくなってやっていけなくなるという事ですね
【まとめ】食料品の消費税ゼロは中小・零細企業の破壊につながる
食料品の消費税ゼロは 一見すると「家計にやさしい」と思われがちですが食品を扱い人たちに厳しい仕組みと言えます。
- 小売業者
- 生産者
- 飲食業者
これらの人たちも商売で給料を得て買い物をする消費者になります。
最悪な展開だと農家や飲食店が激減しますね。
本当に守るべきは、 単なる短期的な価格の安さではありません。
「食のインフラ」を支える人たちを 制度設計によって健全に守ることこそ 未来の生活を守る道ではないでしょうか。
さすがにそんな馬鹿なことにならないようにちゃんと制度を作ると思うのですが、この前の朝まで生討論の立憲民主党の幹事長:小川淳也氏の様子を見ると不安になりますね。