未来の繁栄に祈りを込めた彫金作品「騎龍菩薩・鳳凰唐草図」

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2026年の2月に開催される第31回「日本の美術〜全国選抜作家展〜」に展示する作品を彫金しました。

作品名は「騎龍菩薩・鳳凰唐草図」となります。

技法的な部分の紹介をありますが今回はどのような意図で本作品を彫ったかを紹介します。

彫金関連の電子書籍はこちらにまとめています。

目次

希望ある未来への祈りを込めた彫金作品

本作品のメインとして中央に彫っているのは文殊菩薩。

通常文殊菩薩は獅子に乗っていますが今回は国家鎮護の祈りを込めて龍を彫っています。

文殊菩薩の持ち物(持物)

右手:知恵の象徴である「利剣(りけん、智慧の剣)」を持つ → 「無明(むみょう=迷いや煩悩)」を断ち切る剣

左手:経典(般若経)を乗せた蓮華を持つ

文殊菩薩の持つ利剣は古い壁画などでは装飾が多いものもあり今回の剣も柄や鍔など含めて豪華にしようかとも考えましたが、迷いや煩悩を切り払い本質を知る智慧をもたらすという由来から考えて剣の装飾は極力シンプルにしました。

左手に持つ経典は多くの仏像では巻物を持っているものが多く見られます。

イラストなどでは経典を開いてなびかせるものもあります。

ただ今回は獅子を龍に変えたように儀軌に縛られない部分も多く作りたいと考えたのでシンプルにたたんだ経典を彫ることで菩薩にだけ目がいかないように彫りました。

文殊菩薩の持物の意味するもの

文殊菩薩は「智慧」の象徴。

その剣は暴力ではなく、「真理を見抜く力で迷いを切り払う」象徴です。

言葉・論理・思想の鋭さを視覚的に表したものとも言えます。

また文殊菩薩は通常獅子に乗っておりその獅子の吼え声が人々の迷いを晴らし教えを遠くまで響かせるとされています。

たまに創作物で技の一つとして出てくる獅子吼(ししく)の元ネタです。

現在では大演説をしたり雄弁に語ることを獅子吼ともいいます。

今回は獅子ではなく龍を彫ることで龍の吼え声、龍吼(りゅうく)が響き渡るという意味を持たせています。

龍吼はある社殿で拍手をすると反響して龍の彫り物が鳴いているように見えるというものですが、今回は獅子よりも龍の方が菩薩の教え、迷いを晴らす力が遠くまで響くであろうという事と、反響するという点からあらゆる人が響きにこたえてその声が大きくなることを願いを込めました。

冒頭でも書いたように龍は国家鎮護の象徴の神獣でもあり選んでいます。

秩序ある世界の象徴である鳳凰

以前鳥系モチーフの一環で紹介した鳳凰は秩序のある世界に現れる、徳の高い君主や国家のもとに現れると言われます。

徳とは「仁・義・礼・智・信」の五徳、鳳凰はこれらを備えた理想的な存在とされます。

鳳凰は正しい治世を行う徳の高い君主のもとに現れるとされているため、鳳凰のモチーフは「理想の治世」への願いを内包するとされており、瑞兆(めでたい事の前触れ、前兆)として認識されています。

鳳凰をどのように彫るかというのは過去の作家の芸術性が強く反映されますのでこだわった彫り方にしようかと考えましたが今回の鳳凰は羽と尾羽は以外はシンプルにしています。

鳳凰と唐草を合わせた「鳳凰唐草」というのがあり、そもそもそれをもとにしているため鳳凰があまりに目立つように彫るのは趣旨とずれるため体はシンプルにしました。

鳳凰とともに菩薩を囲む唐草とは

今回彫った唐草・アカンサス模様は我々人間を植物に例えて彫っています。

民草という言葉があるように古くから日本の作品では人を青人草など植物に例える表現が多くあります。

様々な人間が複雑に絡み合いながらも大いに繁栄するようにとの祈りを込めました。

その関係上今回の唐草は所々円のスムーズな曲線をあえて崩しています。

様々な交流の中でスムーズなだけではなくてもそれが繁栄の礎になればと考えています。

おそらく全体をざっと見るだけだと気づかないと思うのですが、作品の随所の私の誇示的な願いと哲学を込めて彫りました。

長く彫金をやってきましたがこのように祈りを込めて彫るのは初めだと思います。

たった一枚の金属板への彫金が世界を変えるとは考えていませんが彫金行う人間なりの未来への希望と祈りを込めた作品になります。

2026年の2月に上野で展示が開始されますのでお時間のある方は足をお運びいただけますと幸いです。

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この記事を書いた人

上谷 俊介のアバター 上谷 俊介 彫金師

彫金萬代表、彫金ブランド「IMULTA」を運営しています。

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