こんにちはIMULTA(イムルタ )彫金師の上谷です。
彫金を独学で始めて15年以上経ちまして現在はプロとして仕事をしています。
今回は読む彫金教室の魚子タガネの使い方指南その2です。
前回は魚子タガネの打ち方を紹介しましたが基本的な金槌の叩き方の紹介が中心になっていました。
彫金で模様を彫っていく際には正しい叩き方が出来ているというのが重要になってきます。
魚子タガネだけではなく毛彫りタガネや片切タガネでも「うまく彫れない。」というお悩みをお持ちの方は金槌の叩き方が間違っている可能性が高いので一度目を通してみてください。
前回の記事はこちら
今回は魚子タガネでどのように模様を作っていくかを紹介します。
それでは読む彫金教室を始めます。
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読む彫金教室。魚子タガネ使い方指南その2
今回は魚子(ナナコ)タガネの打ち方第2回。
彫金のやり方というのは人それぞれなので「こんな方法もあるんだなぁ。」ぐらいで読んでください。
ただ一点注意点がありまして、これは本当にあった連絡で下記のようなものがありました。
ブログを見てやってみたけど出来ない!!責任取って!!買った工具代払ってよ!!
読んだだけでできるような技術ではありません、当たり前ですが彫金をやるのは全部自分の責任でお願いします。
では今回の本題。
前回お話した「真っ直ぐ叩くことが重要」というのはそのままに今回は道具の説明から始めます。
魚子(ナナコ)タガネと一口に言っても先端の丸の大きさが違うのでいっぱいあります。
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魚子・ミルタガネの種類
一個前のブログでは12本セットで売ってるから買ったらいいと思いますよ、と書きましたが、MAXで23本ぐらいのセットがあるんじゃなかったかな?ちょっとうろ覚えです。
筆者は市販の魚子タガネを使っていますが、市販の魚子タガネ・ミルタガネには先端の丸の大きさによって側面に数字がふってあり、私がアクセサリーに使うものは3番〜8番、ジュエリーだと1番〜2番のように非常に細かいものも使用します。
レリーフ系の装飾品の場合は状況に応じて使用するものが違ってきますが、必要であれば専用のものを自作して使用します。
数字が小さいものほど先端の丸が小さい魚子タガネ・ミルタガネという事になります。
魚子が先か、模様が先か
彫金の模様にないところに打っていくパターンと模様の内側に打っていくパターンがあります。
画像のベルトバックルは彫金模様の外側に魚子タガネを打っており、模様が引き立っているのがよくわかると思います。
どちらかというと彫金模様的には内側に打った方が和っぽいかもしれません。ここはあくまでデザイン次第です。
どちらが正しいというのはありませんが、面積が広くて彫金模様を彫り足していく方法だと後から打っていく必要があります。
「鋤彫り(彫り下げ)」を施すのであればどっちが先でも大丈夫です。
基本的に先に打つ方法はデザインが完全に決まっているような時にやります。
どっちも使うパターンでもいいと思いますし好みです。
魚子タガネの打ち方のパターン
打ち方、模様としては魚子の丸を重ねて連ねていくパターンと重ねないように丸を並べて打つパターンがあります。
私が使っているパターンは丸を重ねるパターンでアクセサリー、ジュエリーは大体これです。【荒らし】【魚子を撒く】なんて言います。オリンピックのマークのように丸が重なるように打っていきます。
↑写真に写りやすいように強く打ったらちょっと変形しました^^;
並べて打つパターンは仏具とかお寺、和建築の装飾によく使われます。これは【魚子地(ななこぢ)】という名前がついた彫金模様です。
並べて打つほうが神経使うので練習にはなります。
ただ装飾で並べた魚子打ちをメインにしないのであれば練習の必要はないと思いますよ。
魚子タガネを打つ時は丁寧にやりましょう。
作業量が多くなってきた時に陥りがちな思考がこちら
「細かい魚子打つなら1〜2番でいいんでしょ。」
作業として惰性で漫然と打ち始めると細かい大きさの変化等は考えずに「1~2番使っておけばいいでしょ。」という考え方に陥ることがあります。
たまにしか魚子打ちをやらないのであればそういった事はないと思いますが、このような考え方で作業を行うと破損につながる可能性が非常に高くなるので注意が必要です。
魚子タガネを打つときは必ず金属の厚さに合わせて力加減を気をつけましょう。
0.4mm以下の厚さの金属に1〜2番で打つ時は気をつけないとぶち抜いて穴が空きます。
※金属の厚みが0.7mm以上の場合は「読む彫金教室」のブログ内で紹介している魚子タガネや金槌のサイズでは丁寧にやればほぼ穴が開く事は開きません。
しかし非常に大きな魚子タガネや重たいハンマーを使用した場合は穴が開く可能性があります。
また穴が開かなくても松脂やモデリングコンパウンド・ヒートクレイへの固定が不十分な場合、金属製品の「変形」につながることがあるので気を付けましょう。
前のブログで紹介したハンマーを持ち上げることを意識した打ち方だと松ヤニまたはコンパウドにちゃんと固定してあれば穴が開くことはほぼないので叩き方が重要になります。
上の画像は松脂に真鍮板を固定している画像、アイロンを使っての固定方法なのでコストパフォーマンス・安全性共にガスバーナーを使った固定よりも優れています。
形状によっては使えませんが大きな塊の松脂を温めてトロトロにするときに放置しても大丈夫なので私は頻繁に使用しています。
魚子タガネを雑に叩かない事が重要
当然ですが魚子タガネを叩いて金属面をぶち抜いたらもうお手上げです。やり直しましょう。(※やり直せれば)
金属は一回破損したら直せない可能性があるという事を忘れないように作業をするのが一番重要です。
もし人から預かったものを破損してしまったら大変なことになりますからね。
独学の私は正しい叩き方に気づくまでに多くの時間を使ったので、これから始める方は一個前のブログで紹介した叩き方をちゃんと身につけることをオススメします。
最初に基本をちゃんと身に着けておくと上達度が違ってきます。
独学が不安な方はちゃんと彫金教室や専門学校を探して習いに行きましょう。
筆者は独学を推奨してはいますが、それは「できない」という事と試行錯誤することを楽しめることが前提になるので効率的に上達したいという方にはお勧めできません。
読む彫金教室まとめ
今回の読む彫金教室は魚子タガネの紹介と打ち方のパターン、打つ順番を紹介しました。
魚子タガネを打つことで先端の丸が金属面に打ち込まれて独特な雰囲気を持った装飾をする事が可能です。
その一方で金属の厚みによっては破損や変形の可能性があることもご理解いただけたと思います。
最後は前回の内容と重複してしまいましたが彫金で一番重要なのは正しい叩き方を身に着ける事、これに尽きます。
もし今回の記事を読んで興味を持った方は是非一度やってみてください。
魚子タガネを使った陰影打ちなどもっと書く事あるんですがそれはまた別の機会に紹介したいと思います。
IMULTA(@imulta_jewelry)でした。
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