こんにちはIMULTAの上谷です。
独学で彫金を始めて15年たちまして現在はIMULTA(イムルタ)という自分のブランドを立ち上げて彫金師をやっています。
今回は「読む彫金教室」という事で、真鍮アクセサリーの鎚目(つちめ)リングの作り方を紹介します。
最近はハンドメイドブームという事もあって、販売イベントなどに行くと「真鍮でアクセサリーを作りたいから作り方を教えてほしい。」という方もかなり増えてきました。
今回は技術的にそこまで難しくない真鍮アクセサリー(今回は指輪・リング)の作り方を紹介します。
かなり簡単にザックリ作るので多分誰でもできます。
リクエストをいただいたのでシルバーアクセサリーの作り方を紹介した記事も書きました。
内容は本記事の指輪の作り方と重複する部分が多くありますが、シルバー(銀板)の場合業者からの購入の方法次第で作業がかなり省略できるので、そういったシルバー特有の小ネタも合わせて書いています。
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【簡単な指輪の作り方で学ぶ!!】真鍮アクセサリーの作り方!!
▼動画で見たい方はこちらからご覧ください。
では真鍮アクセサリー作り方鎚目リング編を始めます。
上の画像は3分程度にまとめた作業手順を紹介する動画なので一度目を通しておくと作りやすいと思います。
解説も含めた動画はこちら、作業の手順と注意点も解説しています。
真鍮アクセサリーだろうとシルバーアクセサリーだろうと作り方は同じですが、最初に作るうえでのすごい大事なポイントを言っておくと
ゆっくり作ってください。
彫金は時間をかければいい感じのものができるので慌てずにゆっくりと作ってください。急いで作ろうとするとケガをしやすくなります。
筆者の個人的な考え方としてものづくりにおいて、急がないと薬品が乾くとか工程的な理由が無いのであれば急いで作るメリットは一個もありません。
今回作るのはこちらの真鍮製の鎚目リング。
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- 指輪作りに使う工具と材料の紹介
- 指輪にする真鍮板の切り出し加工
- 真鍮の板をなます(熱してから急冷する)加工
- 真鍮の板を曲げる、リング状に丸めていく
- ロウ付け前のすり合わせ加工(くっつける指輪の端と端を合わせる)
- 真鍮リングのロウ付け加工
- 真鍮リングの縁をヤスリで削る
- 真鍮の平打ちリング完成
- 真鍮リングの表面を叩いて装飾する(鎚目を入れる)
- 真鍮の鎚目リングの完成
- 【簡単な指輪の作り方で学ぶ!!】真鍮アクセサリーの作り方!!まとめ
- 彫金のご依頼の際はギャラリーを参考にご覧ください。
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指輪作りに使う工具と材料の紹介
では今回真鍮リングの製作に使用する工具を紹介します。
そのほかの彫金に使用する工具はこちらの記事をご覧ください。
↑こちらの記事で紹介している道具全てが必要なわけではありませんが、持っておけば今回紹介するリングを作る以外にも大体の作業は出来ます。
「ハンドメイド感覚で気軽に指輪を作りたい」という方であればそこまで多くの工具は必要になりません。
アクセサリー作りを続けていく中でご自身が「これ必要かも」と感じたものをちょっとずつ買って、本当に必要であればさらに買い足すのをオススメします。※なんとなくで買うと大散財するので気を付けましょう(実体験)。
・材料
- 真鍮板(厚さ1㎜)
- 銀ロウ
今回紹介する指輪の作り方は出来るだけ簡単にしているので材料はこれだけです。
指輪にする真鍮板の切り出し加工
今回紹介する指輪の作り方では真鍮の板の状態から加工するので、1mmの厚さの真鍮板から糸鋸を使って大体で切り出してください。
幅が広すぎると後で真鍮板を曲げる加工の時に曲げにくくなって大変なので、幅は最大でも3mmぐらいで切り出します。
では今回は9号の真鍮リングを作るという前提で、長さは53㎜ぐらいで切り両端をヤスリでちょっと削るといい感じに9号ぐらいのリングになります。
リングサイズの測り方は下記の記事で紹介しています。
各パートごとに使用する工具を紹介します。
糸鋸の使い方を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
糸鋸を使って真鍮・シルバーなどの金属を切る加工のコツを紹介しています。
真鍮の板をなます(熱してから急冷する)加工
真鍮やシルバーをリング状に加工しやすくするために「なまし(焼きなまし)」という作業をします。(※なまし作業をやらなくても糸鋸で切る事は可能です。)
ガスバーナーで赤くなるまで熱してから水に入れて急冷することで加工しやすくなります。
物によっては熱し過ぎると溶けてしまったり表面が荒れてしまうのでやり過ぎないように中止が必要です。
・彫金アクセサリー作りの基本「なまし」
彫金では指輪を作る時だけでなく金属を曲げたり叩いて伸ばす時は必ずこの「なまし」をやります。
彫金でアクセサリーの作り方を学ぶ上で超基本となる技術で、金属の業者さんだとソフト加工と呼んだりもします。
シルバーでも真鍮アクセサリーでもやることは一緒です。
作業していて「硬い」、今回の指輪作りの場合「曲げにくい」という時はもう一度なましましょう。
鍛金で造形していく場合はきちんとなまさないと割れてしまう事もあります。
繰り返しますが熱しすぎると溶けてしまうので要注意。
真鍮の板を曲げる、リング状に丸めていく
硬い棒なら何でもいいんですが、なました後に真鍮の板を押し付けて曲げます。
上の写真を見ていただくとこの時まだ真鍮板の両端が真っすぐなのでゴムハンマー、または木槌で両端を叩いて丸めます。
そうすると画像の感じで真鍮板がリングっぽく丸まっていきます。
1.2mm以上の厚みのある真鍮板になると硬くなってくるので指で曲げるのはシンドイです。
2mm以上の厚みがある場合はゴムハンマーで曲げるのもきつくなってきます。
最初に書きましたが真鍮板の幅があるとそれだけ曲げにくくなるので程々にしましょう。
(※無理に手で曲げようとするとケガするので気を付けてください。)
※余談
サイズ棒と木槌でやってますが、一応「読む彫金教室」なのでこんな工具もあるよという事で紹介します。
これは金属板や金属線を挟んで握りこむとリング状に曲がるヤットコです。(※成形プライヤー)
前に紹介した記事で「彫金の成形の工程は作業に合った工具を使うといい」と書いた通り、真鍮アクセサリーでもシルバーアクセサリーでもリング作りをする時にこのヤットコを持っているととても楽です(ちょっとお高い、でも3000円しない)。
このプライヤーのように金属線を丸く加工するための工具を使うと、かなり効率的にアクセサリー作りが出来るので1個ぐらい持っておくのをオススメします。
サイズによって指輪作りに使いやすかったり、丸カン作りに使いやすかったりするので、自分が一番使うであろうモノを買っておきましょう。
今回の指輪作りと一緒に丸カン作りを練習すると作り方の理解が早まります。
ロウ付け前のすり合わせ加工(くっつける指輪の端と端を合わせる)
真鍮の板をリング状に丸めていったらゴムハンマー・木槌などで叩いて両端をぴったり合わせます。
真鍮板を木づちで叩いて曲げた結果、真鍮の板が捻じれてしまい合わせる面が傾く場合があります。
(※指輪作りではよくあることなので失敗ではありません。)
曲げづらい場合はヤットコを使ってグニッと捻りましょう。
結構大事な工程で「合わせた隙間から向こう側が見えない」感じになったらいいんですが、初めての方は大体でいいです。
真鍮リングのロウ付け加工
すり合わせた真鍮板をロウ付けしてリングにします。
・ロウ付け加工の簡単な手順
- すり合わせた真鍮板の合わさった部分にフラックスを塗る
- 銀ロウを乗せる
- ガスバーナーで熱する
- ディクセルの溶液に入れる
ロウ付け加工に必要な道具や、詳しいやり方はこの二つの記事をご覧ください。
一応真鍮リングなので粉末の真鍮ロウでのロウ付けの写真も載せておきます。
ただ粉末状のロウはフラックスをいっぱい使ったり扱いにくいので、板状のロウ材をハサミで切った銀ロウ(5分ロウ)を使用します。
フラックスは液体フラックスでもロウ付けが可能です。
リングのすり合わせ面の上に載っているのが銀ロウです。
この写真はすでにフラックスが塗ってある状態なのでガスバーナーで熱していきます。
ロウ付けが終わると画像のようにくっつきます。
ろう付けの後はフラックスを除去しないといけないのでディクセルの溶液に浸けます。
※「フラックスとディクセルって何ぞや?」という方は【彫金アクセサリー】自宅でできる金属のロウ付けのやり方と道具を解説!を読んでください。
上の画像はディクセル溶液の中に指輪を入れた状態です。
普段はこんな白い粒がある状態では使いませんが(普段は全部溶けてるのでパッと見ただの水です。)
写真がわかりづらかったので粉の状態のディクセル(商品名:ピックリングコンパウンド)を「追いディクセル」しました。
真鍮は水にずっとつけてると銅色に変色するので、5分ぐらいで取り出して水で軽くゆすぎます。
ロウ付けの安全対策を動画で解説していますので独学でやってみたい方はご覧ください。
真鍮リングの縁をヤスリで削る
真鍮リングを円形に叩いて整えたら縁の部分をヤスリで削っていきます。
個人的な感覚ですが、この場合ヤスリはあまりギュウギュウ押し付けても効果的に削れないので、押し付けるパワーで削ろうとするのではなく、行ったり来たりする動きを増やすイメージで軽く押さえて使うと早く削れます。
ヤスリで削っていくと粉が出ます。
今更ですが作業中はマスクをした方がいいです。
「こんなに粉がでるんだ。」というのを画像で見てからの方が響くと思ったのでここで書いておきます。
この写真は3Mという会社が出しているラッピングフィルムで真鍮リングの縁というか側面を削っています。
ちょうどいい紙やすりがなかったので使っているだけなので、皆さんは紙やすりを使いましょう。
目の粗さは#240ぐらいのやつがいい感じに傷を消せます。
ラッピングフィルムもホームセンターに売ってるんですが一枚600円ぐらいするので、一枚100円ぐらいで買える紙やすりの方が断然コスパがいいです。
ちなみにラッピングフィルムは彫金で色んな用途で活躍してくれるので私は常にストックを持ってます。すごくいい商品です。
ただ彫金初心者、趣味のハンドメイド感覚で「アクセサリーを作ってみたいなぁ。」ぐらいの方なら確実に必要ないと思います。
バリ取りなどにも使用できる工具についてこちらの動画で紹介しています。
真鍮の平打ちリング完成
紙やすりで磨いてもこれぐらいはいけます。
このようなプレーンなリングを「平打ちリング」といいます。
「これでいいじゃん^^!!」という方はこれで完成です。
お疲れさまでした。
真鍮アクセサリーの磨き方とお手入れ方法を紹介しています。
真鍮はお手入れをしないと緑青(青サビ)が浮いてくるので細目に磨いてあげましょう。
この記事の指輪の作り方ではココから鎚目を入れていきますがプレーンな状態から彫りを入れることも可能です。
彫金が出来るようになると模様・絵を彫ることも出来ます。
「彫り」をやってみたいという方は基本的な練習方法を紹介している動画を作ったのでご覧ください。
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では鎚目リングを作りたい方は続きをどうぞ。
真鍮リングの表面を叩いて装飾する(鎚目を入れる)
指輪の表面に模様の「鎚目」を入れる時は芋槌という金槌で叩いていきます。
あまりパワフルに叩くと指輪のサイズが変わってしまうので気をつけましょう。
逆に言うと「リングのサイズちょっと小さいかも…。」となったらパワフルに叩きましょう。
金槌で叩くとちょっとサイズが伸びます。
いきなり指輪を打つことに不安がある方は余っている真鍮板などで打つ練習をしてから挑戦してみましょう。
板を曲げるだけといった簡単な加工だけをしたいのであれば、ゴムハンマーが安くてオススメです。
またゴムハンマーは他のハンマーと違って作業中そこまで大きな音がしないので自宅で作業したい人向けです。
金槌も色々あるので詳しくはこちらの記事をご覧ください。
真鍮の鎚目リングの完成
これで真鍮の鎚目リングの完成です。
芋槌など金槌の叩く部分の表面をピカピカに磨いておくと、鎚目も磨かなくてもいいようピカピカになります。(※真っすぐ打てば)
ピカピカにすると写真を撮りづらいので今回はちょっとマットな鎚目リングに仕上げました。
最後に真鍮リングの表面をちょっと焼く
青錆(緑青)を抑止する方法で真鍮の表面を焼いて酸化膜を作る方法があります。
それが一番最初にお見せした状態の真鍮リングです。
焼く前の色と比べると変化がわかりやすいと思います。
多分「着けてて育ってくれたらいいな。」って考える人の理想の色かもしれませんね。
槌目リングのお手入れ、あとからキレイにする方法
鎚目リングのお手入れであれば、液体コンパウンドを使って丁寧に磨くことで槌目の窪んだ部分の汚れもとれてキレイになります。
コンパウンドの場合保護膜にもなるので汚れの防止にもつながるためこまめに磨くといいかもしれません。
もし一度作った槌目リングのの窪んだ部分の金属の表面がガサガサしているのが気になる、キレイに整えたいという事であればシリコンポイントを使って磨くという方法もあります。(大変)
シリコンポイントの中でも砲弾型のものがその際使用する工具になります。(下のサムネイルの先端工具)
【簡単な指輪の作り方で学ぶ!!】真鍮アクセサリーの作り方!!まとめ
▼動画で見たい方はこちらからご覧ください。
真鍮アクセサリーの鎚目リングの作り方を紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
出来るだけ簡潔に紹介していますので、もし興味のある方は挑戦してみてください。
怪我に気を付けてください。
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読み直し用ページ内リンク
- 指輪作りに使う工具と材料の紹介
- 指輪にする真鍮板の切り出し加工
- 真鍮の板をなます(熱してから急冷する)加工
- 真鍮の板を曲げる、リング状に丸めていく
- ロウ付け前のすり合わせ加工(くっつける指輪の端と端を合わせる)
- 真鍮リングのロウ付け加工
- 真鍮リングの縁をヤスリで削る
- 真鍮の平打ちリング完成
- 真鍮リングの表面を叩いて装飾する(鎚目を入れる)
- 真鍮の鎚目リングの完成
これからハンドメイドを始めようという方は真鍮以外のゴールドフィルドやシルバーを使用するうえで、金属の特性上のメリット・デメリットをまとめたこちらの電子書籍をご覧ください。
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ロウ付けに関して練習になるシルバーリングの作り方はこちらをご覧ください。
ロウ付けに慣れないうちは溶かしてしまう可能性がありますが「とにかく強火で熱すればロウ付け出来る」という感覚だと上達しないので火力の調節が覚えやすい銀線での練習をオススメします。
今回の作り方は彫金の基本になっているやり方ばかりなので「彫金を独学でやってみたい」という方はこちらをご覧ください。彫金の歴史も一緒に紹介しています。
IMULTA(@imulta_jewelry)でした。
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