こんにちはIMULTA彫金師の上谷です。
独学で彫金を始めて現在はプロとしてご飯を食べています。
早速ですが今回は糸鋸の使い方についてのお話です。
彫金を始めたばかりの時なんかは色々と道具を買いそろえますが、「彫金セット」なんて名前の工具セットを買ってみたものの、どれをどのように使ったらいいか使い方がいまいちわからないなんてこともありますよね。
そんな中で一番使うであろう彫金の糸鋸についての解説、複雑な使い方をするわけではありませんが基本的な使用方法を紹介します。
初心者の方が彫金の知識を増やすために役立つ電子書籍を用意しています。
彫金で糸鋸を使う時は高さを考える
▼動画で見たい方はこちらからご覧ください。
彫金に必要な工具はたくさんありますが今回の記事では糸鋸に関して特に詳しく書いていきます。
シルバーアクセサリーの作り方を調べている方で糸鋸以外の工具に関してまとめて知りたい方向けに記事を用意しています。
最初からすべての工具を揃える必要はありませんがこの記事と合わせてご覧ください。
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糸鋸で金属を切り出す。
最近世の中で「彫金」と呼ばれるものはかなり幅広くなってきています。
- 地金から切り出す・叩いて打ち出す・彫るなどして製作する方法(彫金・鍛金)
- ロストワックス製法(鋳金)
私が彫金技術として認識しているのはこの2種類。
アートクレイシルバーは含めません。
この中で今回はシルバーから糸鋸を使って切り出す方法と、切る時のコツについて書いていきます。
彫金の歴史などについてはこちらの記事をご覧ください。
糸鋸で金属板を切り出す作業
まずは作業の風景から
※切る金属は【ゴールド・シルバー・真鍮・銅】いずれに対しても一緒です。
↑糸ノコで模様を切り出している様子です。
はじめに引いた下書きに沿って糸ノコをギコギコと上下させて切り出していきます。
写真に写っている机に付いた木の板は「すり板」という工具です。
↑最近日本でも販売されるようになったこれが色んな用途に使えて便利です。
普通すり板は鎹(かすがい)を使ってしっかりと机に固定しますが、私は同じ場所で彫り作業もなんもかんも一緒にやっているので邪魔な時はサッと外せるように鎹はつけていません。
鎹(カスガイ)を付けた方がいいかどうかで言う絶対に付けた方がいいです。
しっかりと固定されている方が切りやすいのは間違いありません。
糸鋸作業では指を切るなどケガをする可能性があるので気をつけましょう。
またスリ板の基本的な使い方についてはこちらの記事をご覧ください。
鋸刃と糸鋸のフレームは用途によって使い分ける
まずはどんな糸鋸のフレームがいいかというのがポイントです。
筆者の私物は写真をご覧の通りフレームの奥行きが深いのと浅いのがあります。
大きい金属板への透かし彫りや大きい銀板からの切り出しをしないのであれば奥行きが浅い糸鋸フレームでも問題ないと思います。
実際に筆者は作業内容で使い分けるために2種類持ってます。
切る対象が大きくても小さくてもいけるので便利なのは深い方。
慣れるまでは大変かもしれないませんが、浅かろうが深かろうが糸鋸を使いこなすには慣れは必要なので深い方で慣れる事をオススメします。
糸鋸の刃の種類
フレームの次は糸鋸の刃です。
上記の画像は金工・木工・ワックス用の3種類の鋸刃。
金工用の鋸刃で工具屋やネットで購入できる鋸刃は基本的に3つ、スーパーパイクとアンチロープとバローべです。
たまに他のダガーという名前の鋸刃とか、他の会社の鋸刃が売ってる時もありますが、安定的に売ってるのがこの3つ。
太さは色々あるので細かい模様を切って入れたいなら細いもの、ガッツリ切りたいなら太いものを使用します。
どの会社のものがいいかは人それぞれ好みがあるので使ってみないと何とも言えません。
刃はフレームを少し歪ませて留めてピンピンに張った状態にして使用します。
雑に保管すると結構すぐに錆びるので油紙or防錆紙に包んで100均の箸入に入れておくと保管しやすいです。
SUPER PIKEの鋸刃は細いものから太いものまでセットで販売されているものがあるので、試してみたい方にはこれをオススメします。
糸鋸で切る時は高さを考える
切るのは刃をピンと張ってから上下に動かしてギコギコ切っていきます。
真っすぐ切るにはそれなりに練習が必要なのとちゃんとした高さで切る必要があります。
そしてあんまり荒い目の鋸刃だと切り初めがスムーズに入っていかないので中くらいの目の鋸刃をお勧めします。
彫金の本だと軽く刃を上に持ち上げて軽く金属に切れ込みを入れてから切り始めるってなってると思うんですが、ヤスリで軽く跡を付けてから糸鋸で切り始めた方がズレないので楽です。
もしくはソロバン型のポインターで切れ込みを付けるのもオススメです。
上下させながら切りたい方向に軽く押し付けるように切ります。
真っすぐ切りたいなら結構強く押し付けても大丈夫です、ただ鋸刃がちゃんと張れていないと鋸刃が違う方向を向くのでほどほどに。
曲線を切りたい時はカーブするときに細かく動かしながら回していきます。カーブがきつくなるほど上下させる細かさもより細かくなります。その場で180度方向転換することもできます。
※その場で反転させる動きは太い糸鋸では向いていません。0番以下の太さの糸鋸の使用を推奨します。実際筆者はその場で反転させるような切り方はほとんどしません。
一番基本ともいえる作業ですがここでどのくらい正確に切り出せるかで作業時間が大幅に変わります。
ただあまりギリギリで切ると完成前の仕上げで調整しにくくなるので気を付けましょう。
糸鋸で切る時の高さ(※超重要)
大体切る対象が目線よりちょっと下ぐらい、胸の高さぐらいです。口ぐらいの高さでやってる人もいます。
文字を書く時のように見下ろすような位置でやると線がクネクネしやすくなります。
あとは慣れ。
椅子の高さを下げたりして自分の一番切りやすい高さを探すのがいいと思います.
「高さなんてテキトーで大丈夫っしょwww」という人は絶対に上手く切れるようになりません。
適正な高さで真っすぐ切ることに慣れてからなら高さを変えても大丈夫です。
切り出しの補助アイテム「ラスペネ」
糸鋸で切り出す際に作業を効率化する方法として、伝統的な方法で言うと刃に蝋を塗ったりテレピン油(松脂からとれる油)を塗る方法があります。
ただ管理しやすさなども作業には重要になってくるので、筆者が色々試して一番いい感じだったのが工業用の切削油をつかうことです。
簡単に手に入るところで言うとラスペネの使用をオススメします。
なんでラスペネかと言うと単純にDIYでも使えて管理も簡単だからですね。
ラスペネはそれ自体が錆止めや滑りやすくする効能もあるので、家のドアとかが錆びついたりしたときに転用できますよ。
あと車とかバイクのメンテナンスにも使えます。
そういう意味でもオススメです。
以前はステンレス対応のドリルオイル(画像左)を使っていたんですがラスペネの方が管理が簡単。
少し多めに挿すと作業中の摩擦熱を散らしてくれる&刃の食いつきをよくしてくれるので便利です。
他の記事でも書いてますが工具は作業中の摩擦熱でダメになることがほとんどなので、糸鋸だろうがヤスリだろうが油を挿すことで工具へのダメージが抑えられるのであればじゃんじゃん使った方がいいです。
凄い細かい作業になると油を挿せないような場面もありますが、そこまで神経を使う作業をする人はこのブログを読むまでもなく油を挿す挿さないを使い分けてると思うので、細々した切り分けは割愛します。
細い糸鋸の刃は弾力を利用する
多少慣れてきてからのコツになりますが、細い糸鋸で切る時は弾力性を利用して切っていくがポイントになります。
通常は糸鋸の柄に刃を張る時にある程度ピンピンに張って(弓に弦を張る感じ)使います。
使用感は人それぞれ違うのであくまで私の肌感覚ですが、細い糸鋸の刃はあまり強く張りすぎると刃自体に負荷がかかって逆に切りづらくなるのと
特に曲線を切る時は少し余裕を持たせておかないとすぐに折れます。
ヤスリが入らないような狭い箇所は糸鋸の側面を使って磨くこともあるので、余裕を持たせておかないとうまいこと磨けません。(あんまり張りすぎていると傷が入ります。)
糸鋸で直線を切る
あくまで個人的な理由ですが、直線を切り出すのであればスーパーパイクがオススメです。
刃そのものに弾力性が少ないので糸鋸の柄に軽く張ったとしても切断面に押し付けた時に刃が捻じれづらいです。
糸鋸を使って曲線を切る、側面で磨く
曲線を切ったり、側面で磨くのに向いているのはバローべです。
正直曲線を切るのは練習すればどれでもいいんですが、側面で磨くのはバローべが向いています。
特に5/0以下の細い糸鋸を使ったときに顕著になります。
狭いところを磨く時にラスペネを使うと変なところを切ったりするので気を付けてください。
↑こちらは私物ですが(自作)、形は糸ノコですべて切り出して隙間の部分は全部糸鋸で磨いてあります。
うっかり切りたくないところを養生テープでガード
上の項目で「糸鋸の側面で磨く時にラスペネを使うと変なところを切ることがある」と書きました。
ラスペネを使わなくても糸鋸で磨くことでまだ慣れていない時はうっかり関係ないところを切ってしまうことがあります。
予防策の一つとして「ここうっかり切っちゃいそうだな~^^;」という所は養生テープを小さく切って貼っておくと気休めですが最低限保護することができます。
「練習すればそんなの必要ないからwww」と思う人もいるでしょうし実際その通りなんですが、いざやってしまったら修正がめんどくさいのであくまで安全策の一つとして頭の片隅に置いておくと役に立つかもしれません。
糸鋸を使わない作業にするという選択肢
糸鋸の側面を利用して磨くのは慣れるまではかなり難しいです。
慣れてからでないとうまくはいかないので、初心者は絶対できないと思います。
そうした場合、いっその事糸鋸で磨くのをあきらめて「キサゲを使う。」というのがオススメです。
プラモ作りの経験がある人には「スクレーパー」と言った方がピンとくると思います。
糸鋸の使い方を紹介する記事で「糸鋸の使用をやめてしまえ」というのも矛盾してますが、結局 きれいなものを作る。というのが一番なので
糸鋸でうまくいかない時は頭を柔らかくして他の工具を使うのも一つの手です。
読む彫金教室、糸鋸との使い方まとめ
糸鋸を使って金属を切り出すときは作業する高さによって作業の効率とクオリティが変わってきます。
今回は使用方法や糸鋸の刃など道具について紹介しましたが、工具の使用感は体格によって変わってくるので自分の使用感に合わせて使い分けてください。
最後の項で書きましたが結局すべてはきれいなものを作るための工程なので「この工程はこうやるのが正しんだ!!」なんて思い込まずにやりやすい方法を探してのんびり作業する事をオススメします。
彫金にチャレンジする人の参考になれば幸いです。
IMULTAでした。
これからハンドメイドを始めようという方は真鍮以外のゴールドフィルドやシルバーを使用するうえで、金属の特性上のメリット・デメリットをまとめたこちらの電子書籍をご覧ください。
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今後ハンドメイドアクセサリーの副業を検討されている方はクレジット決済が必要になるので、squareを用意しておきましょう。
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次はロウ付けに挑戦してみましょう。
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