こんにちは彫金師の上谷です。
今回は片切り彫りの練習方法についての解説です。
片切りタガネの使い方について色々と記事を上げてきています。
本ブログで片切りタガネの基本的に彫り方として練習方法と合わせて紹介した彫り方は以下の通りです。
本ブログで紹介している片切りタガネの基本的な彫り方(片切り彫りの基本)
- 三日月彫り
- 波線彫り
- 半月彫り
- 山彫り
- 波彫り
これらの練習と並行して行う有効な練習方法を紹介します。
また今回の練習方法は一つ一つの彫り方のほかに片切り彫りを使用した絵の彫り方の基本の解説になります。
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片切り彫りを利用した絵の彫り方
▼動画で見たい方はこちらからご覧ください。
今回は片切りタガネを使った片切り彫りの練習方法としてキャラクター彫りを紹介するとともに、練習するうえでの重要なポイントを解説します。
参考にするかどうかはご自由にどうぞ。
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アニメのキャラクター(文豪ストレイドッグスの芥川龍之介)を片切り彫りの練習に使用する理由
彫金は伝統工芸の一つなのでこういった伝統技法の練習には葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」や河鍋暁斎の「雷神」などを題材にした方がいいのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし筆者の考え方としては初心者や練習を繰り返す段階で繊細な日本画に挑戦するのは、少し難し過ぎると考えています。
どちらの絵が優れているという事ではなく、線の数が多すぎる絵を練習の題材にすると「完成すること」が目的にすり替わってしまうのでアニメキャラや漫画のキャラクターがオススメ。
線を彫る練習のための絵を彫るのであって、絵を完成させることが目的ではありません。
特に今回の芥川龍之介は筆者自身が片切り彫りのいい所を出して彫ったのでちょうどいいというのもあります。
片切り彫りの刃をどちらに傾けるかがポイント。
片切りタガネは刃をどちらに傾けるかが絵を彫る上で非常に重要なポイントになります。
刃を傾けて彫ると絵が立体的に見えます。
これはハワイアンジュエリーなどの彫り方で、現在の洋彫りの主流な彫り方と言えると思います。
逆に刃の傾斜を絵の外側に向けると絵が平面的に見えます。
これは和風なものを彫る時に用いるとそれっぽく見える彫り方です。
ただ全部が全部それに該当するわけではないのでご了承ください、細かい線を内側にたくさん彫る時はちょっと話が変わってくるときもあります。
片切り彫りの深さを調節する。
墨などを入れず、彫りのみで立体的に見せる場合は影の入り方を考えて彫る必要があるので、日が当たった時の影の入りを考えて彫りの角度と深さを調節します。
大きく深く彫るところを作ることで絵の雰囲気を作るため、大枠を深くざっくりと彫って細かなところは浅く彫ります。
どのように見せたいかによりますが今回のようなキャラクターの彫りの場合であれば、雰囲気重視で彫る事をオススメします。
逆に日本画の場合は線の一つ一つに強弱をつけると絵としていまいち認識しづらくなります。
墨入れをするのであれば刃の向きはそれほど関係ない。
彫ったものに墨を入れる場合と入れない場合があります。
基本的に墨を入れるのであればここまで話したような刃の向き光の当たり方というのを気にする必要はありません。
今回は片切りタガネの彫り方を上達するにはどうしたらよいかという事をポイントに話しているので、それを言うと元も子もないのですが「自分が練習する必要がない部分」を切り捨てるのは効率的に学習を進める上で非常に重要です。
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片切りタガネは筆
幕末~明治にかけて活躍した金工師に「加納夏雄」という方がいまして、その方は片切りタガネを使った彫金が非常に見事であると有名な偉人です。
「金属面の筆で描くがごとく絵を彫り上げた。」なんてことを言われるぐらい見事な腕前で明治初期の龍銀貨の大元を彫り上げた方で、なんでも鑑定団などあらゆる美術系の媒体(テレビ・雑誌など)に取り上げられています。
片切りタガネの彫りは普通に彫る以外に捻ったり色々やることで自分の思った通りに線を彫れるというのが特徴で、まさにその特性は筆に通ずるところがあり、文字を彫る彫金にも適したタガネです。
基本的に絵を彫る事を題材に今回は片切り彫りの練習方法を解説していますが、文字を彫りたいという方もいらっしゃると思ういます。
文字を彫りたいという方には片切りタガネは非常にオススメなタガネです。
目的を持ったタガネ研ぎの練習になる。
通常の片切りタガネでも研ぎたての時などは彫れますが、上の画像の矢印で示しているような線を彫るためにはこの線を彫るための片切りタガネを用意したほうが彫りやすいです。
筆者の場合この芥川龍之介を1.2mm幅の片切りタガネ1本で彫っていますが、線の細さに合わせてタガネは変えた方がいいです。
目的を持たないタガネ研ぎは絶対に上達しない。
彫金以外のタガネはわかりませんが、少なくとも彫金のタガネ研ぎは「こういうタガネを作る」という目的を持たずに練習しても絶対に上達しません。
例えば市販されている片切りタガネと同じ形にしたいと考えて研いだとしても、彫った時にどのような形で彫れれば成功かというのが明確になければ研ぎが上手くいっているかどうかがわかりません。
成功か失敗かよくわからなければ何を改善したらいいのかもわからないので上達するきっかけすら掴めないはずです。
細くて浅く、そしてそれを調節しながら彫れるタガネをる来るのであれば、それに適した形を考えながら作る必要があります。
このように「こういった形のタガネが欲しい」と考えて試行錯誤するとタガネ研ぎは間違いなく上達します。
まともに彫金タガネを触ったこともない初心者にいきなり研ぎをやらせるデタラメな彫金教室もあるようなので気を付けましょう。
上達しないように指導して講習代をとるだけの教室です。
自分が普段やらない線を彫る練習、絵を真似る
彫金の練習に慣れてくると自分の得意な線や彫りやすい線ばかりを彫るようになります。
これはシンプルに上達しなくなるので、自分が普段彫らないような線を彫るために何かの絵を真似て彫るというのは非常にオススメです。
どんな絵でもいいのですが前述したように日本画のように完成まで時間のかかる絵というのは「絵を完成させること」に目的がすり替わってしまう可能性があるので、細かすぎる絵は止めておきましょう。
絵が上手く彫れているかどうかはどうでもいい。
この練習では絵が上手く彫れているかどうかはハッキリ言ってどうでもいいです。
線を真似る、思った通りに線を彫るにはどうするか試行錯誤するというのが練習のポイントなので、彫り終わった後「結果的にきれいな絵を彫れていた」としても今回の練習の趣旨とはあまり関係ありません。
深さに頼った片切り彫りからの卒業、中級者へ
片切りタガネだけではなく毛彫りタガネにも言えることですが、金属面に刃先を深く差し込んで彫る彫り方をしている時は金づちでタガネを叩いた時の金属の抵抗が強いので丁寧に彫らなくてもある程度キレイに彫る事が出来ます。
浅く細い線を彫る時は刃先の抵抗が小さくなるので力任せに彫る事が出来なくなるため、やってみると自分がちゃんとした姿勢で彫れているかどうかの確認にもなります。
片切り彫りの悪い癖を直す。
片切りタガネで片切り彫りの練習をしていると刃先をちょっとこねるような癖がつく場合があります。
漢字を彫る際の急カーブで「自分の意志で必要があって刃先を捻る」のであれば問題ないのですが、彫刻台を回すのをめんどくさがったりといった悪い理由で片切りタガネを指先でこねて回すのは非常に悪い癖です。
この癖は明確に片切り彫りの上達を妨げる癖なので治すようにしましょう。
今回紹介したキャラクター彫りのように、一般的な文字とは違った彫りまわしがある場合は「勢いを出すため」「雰囲気をつけるため」「この線ぐらいはいいはず」といった言い訳がしやすくなります。
実際にやってみるとあらゆる角度から刃を入れないといけないので頻繁に彫刻台を回す必要がありますし、刃の角度を途中で変える必要もあるのでめんどくさくなる瞬間が必ずあります。
その時悪い癖がついているかどうかの確認が出来るのでやってみてはいかがでしょうか?
まとめ
キャラクター彫りは自分の苦手な彫り方がどのようなものかというのを確認するために非常に有効です。
途中でも書きましたが絵自体が上手く彫れているかどうかはひとまずどうでもいいです。
自分の考えた通りの線を自由に彫れるようにトレースする練習だからこそ、出来ない点というのが多く見えてきます。
はじめはストレスになるかもしれませんが非常にオススメの練習なのでぜひ一度やってみてください。
IMULTAでした。
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