こんにちはIMULTA彫金師の上谷です。
独学で彫金を始めて15年たちまして現在はIMULTA(イムルタ)という自分のブランドを立ち上げて彫金師をやっています。
今回は「読む彫金教室」という事で片切タガネの立体的な彫り方について書きます。
このブログを読んで彫金を始めてみたというお声をちょこちょこいただくようになってきました。
ただタガネの彫りとは言え彫金は油断すると火傷など深いケガをするので気を付けて行ってください。
今回紹介する彫金方法は模様を立体的に彫る彫金の基本的な技法の一つです。
行う事自体は簡単ですが組み合わせでいくらでも使いどころがあるので色々試してみると見え方が変わって面白いと思います。
【片切り彫り】彫金タガネの彫り方練習~立体彫り
片切タガネに特化した話になりますが、彫る時に刃をどっちに向けているかで見え方がだいぶ変わってきます。
彫る傾きを絵の内側に向けて彫ると模様が立体的に見えるように彫れます。
ただ「線が細い、深さが浅い」となると当然立体的に見えないのでしっかりと彫るのがポイントになります。
実際に立体彫りを組み合わせるとこの動画のような絵を彫ることが出来ます。
平面に彫っていますが絵が浮き上がって見えると思います。
ちなみにキャラクターはツイステッドワンダーランドのリリア・ヴァンルージュです。
平面を立体に見せる
片切タガネの刃の向きを全体的に内側に向けて彫るのは最初に書いた通りです。
あとは傾きを調整することで絵の向きを調整します。
例えば葉っぱがどっちを向いているように見えるかなどですね^^
立体彫りは毛彫りタガネを使ってもできます。
過去の投稿でも書いているのですが毛彫りタガネと片切タガネは彫る時の傾きを調整することで結構同じように使えます。
つまり今回の彫り方は毛彫りタガネでもできます。
ただ彫った時のキラキラになる「照り返し」が毛彫りタガネの場合彫った面の内と外の両方にできるので調整するのが難しくなります。
片切タガネの場合
片切タガネで彫った場合、彫った時「レ」の形に彫れます。
「レ」の縦棒の部分は彫った時にバリが離れていくだけなので「照り返し(彫った面がキラキラする状態)」ができないません。
その結果キラキラした「照り返し」の部分にだけ目が行くので立体的に見せるための視覚効果が十分に発揮されます。
毛彫りタガネの場合
毛彫りタガネの場合、彫った時「V」の形に彫れます。
毛彫りタガネは彫った「V」の両面がキラキラするのが基本なので細かく模様を彫りこんでいくと最終的に全体がキラキラの「照り返し」だらけの状態になるのでどこを立体的に見せたいのかがわかりにくくなります。
そのため調整が必要になるので慣れないうちは毛彫りタガネで練習しない方がいいです。
どうしても毛彫りタガネを使いたい場合の簡単な解決方法としては、「V」をものすごく鋭角にした毛彫りタガネを使うか、刃の片方をキラキラしないように荒らしておく方法があります。
どちらにしてもタガネを研ぐ技術が必要になってくるので、そんな苦労をするぐらいなら素直に片切タガネで練習した方が楽だし上達が早いです。
あくまでお好みなのでやってみたい方はどうぞ^^
彫金の絵画的な要素
彫金タガネを使って模様を彫っていくので絵画的な陰影の表現も使えます。
陰影線を交差させるまで行くとちょっと「照り返し」のキラキラがうるさくなるのでその場合はキラキラしない荒らしたタガネを使うか、模様を黒く染めるために「墨入れ」します。
ただ私の場合「墨入れ」は滅多に行わないのでそこまで陰影線を引きません。
大体は線の太さと彫る線の深さで奥行きを表現してます。
今回紹介した立体的な彫りで「深く、彫りの傾きを調整して!!」という練習をたくさんすると驚くことに浅く繊細な線を彫るのがちょっと苦手になってたりします。
これは「深く彫る、傾きを調整するために彫りの途中でタガネを捻る」という事に意識が行き過ぎて「押し彫り」を無意識にしてしまっている可能性が高いです。(経験談)
※「押し彫り」は彫金タガネを叩く時、彫る方向に力が入っている彫り方です。
ついでに書いておくと繊細な線を彫る時は彫る方向に力が入ってはいけないので(刃先を安定させる程度には力が入っていてもOK)タガネを叩かない限り刃先に力が加わらないように「留め彫り」することを意識するといいと思います。
【片切り彫り】彫金タガネの彫り方練習~立体彫りまとめ
- 平面で立体的に見せる彫り方をしたい時は片切タガネを使いましょう。
- ちゃんとやってみたい人は彫る前にデザインに「どの方向に彫るか」を書き込みましょう。
- 毛彫りタガネでの練習はオススメできません
- 深く彫るばかりじゃなく繊細な彫りも練習しましょう。
IMULTA(@imulta_jewelry)でした。
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