こんにちはIMULTA彫金師の上谷です。
独学で彫金を始めて現在では数少ないプロの彫金師として仕事をしています。
彫金教室に行ってみようかなという人は目を通しておくと予習になります。
読む彫金教室、片切りタガネ彫り方練習、タガネの動かし方。
今までの彫り方を紹介した投稿の中でもオリジナルの彫り方はいくつか紹介していきましたが、過去に「引き彫り」「留め彫り」というオリジナルの名称で紹介したうちの今回は「引き彫り」を紹介します。
名前がついていますがタガネの動かし方に名前を付けているので模様に対して名前を付けているわけではありません。
引き彫り
以前の投稿でも紹介しました「波彫り」の時に登場した「引き彫り」ですが、
完全な私のオリジナルの考え方です。
多分伝統工芸士の方は名前なんか付けていないでしょうし、もしかしたら他に正しい名前があるのかもしれません。
これは模様の名前ではなく彫金する際のタガネの動かし方、彫り方に名前を付けています。
引き彫りの初め
以前の投稿と重複してしまうのですが、私は特定の模様を彫れない時になぜできないかを考えます。
波彫りができなかった時に「彫り跡の形がキレイに出ない」というのがありました。
これはタガネが進みすぎてしまうということともう一つ。
彫金に慣れていない時にありがちなのですが、彫っている時にぶれないように進行方向に向かって力が入っています。
自転車に例えるとハンドルに全体重をかけて漕いでいるような感じですね。
最初に毛彫りで直線の彫りの練習をするときにまっすぐに手前に引くように彫ることを心がけるので、そのまま彫る方向に力をかける癖がついてしまっていました。
これだと自分が意図していないところに力が加わるので彫りの進行方向をコントロールできていない状態です。
その結果彫り方が汚くなっているということです。
実際の引き彫りのやり方
彫る時は彫金タガネをつまんでいる指と刃先のひっかかりの最低限で姿勢を支えます。
それこそスラムダンクの「左手は添えるだけ」です。
超基本です。
タガネが進む力はタガネで叩く力のみにします。これをできるようになると彫金タガネで彫っているときに急なカーブをやる時も乱れずにきれいに彫ることができます。
さらに片切りタガネを叩いたときに進まないように少し力を進行方向と逆に入れます。
そうしながら刃を捻るときれいに捻れると同時に進み具合も調節できます。
引き彫りの練習方法
あくまで練習方法できれいにやる必要はないです。
こんな感じで刃を動かすんだ~くらいで動かし方を認識するための練習方法になります。
一点を支点にして丸を彫ります。
支点にしている部分の刃の角は全く進んではいけないので回す側の刃で彫る感じです。これは刃先に力をかけている、ハンドルに体重をかけているような状態だと絶対にできません。
なんだったら刃の片側で彫り刻んでいくような感覚です。
こういう練習をすると「キレイに丸が彫れないとダメだ。」なんていう人がいるかもしれませんが、こんな模様を彫ることはないのでそこまで形にこだわる必要はないです。
刃をどう動かすかというのを覚えるための練習なので、もしやるのであれば勘違いしないようにしてください。
こんな丸を彫るのであれば洋彫りタガネでやりましょう。
この形を彫るなら洋彫りタガネの方が向いています。道具選びも能力のうちです。
山彫り・波彫り以外では何に使うの?
答え:全部
全てに使います。名前がついていると特定の模様にのみ使うように感じますが、これは彫り方全体の超基本です。
彫金をやっていてタガネの扱う感覚にははっきりと2つのステージがあります。
ステージ1:進行方向に力が入っちゃってるけどなんとなく模様が彫れている。タガネを真っすぐ叩ける。
ステージ2:引き彫り・留め彫りができる状態で色んな模様が彫れる。
深さをコントロールできるなども言い始めるとたくさんステージ分けしないといけないのでやりませんがこの2つはハッキリと顕著に分かれます。
「彫っているときに指先に力が入って疲れるんだよね」という方はステージ1(初心者)です。
ステージ1を脱すると彫っていて指が疲れる・痛くなることが一切無くなるのでハッキリとわかります。
※長時間働いていると腰とか肩が痛くなるのでそれはまた別の話です。

また、この動画でも紹介していますが「彫っている途中にタガネを持つ指が痛くなる」というのは初心者にある悪い癖です。
決定的に上達を妨げる要因の一つのなので上達を目指すのであれば絶対に直しましょう。
引き彫りができるようになると俄然彫ってて楽しくなります。
できなかった彫り方もガンガンできるようになりますので超おすすめです。
なんとなく練習しててできるようになることはあまりないので、こういう彫り方があると認識したうえで練習すると絶対に上達します。
これは絶対です。
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