こんにちはIMULTA(イムルタ)彫金師の上谷です。
今回の読む彫金教室は毛彫りタガネの彫り方の練習方法を紹介します。
紹介する彫り方は筋彫りという全体のバランスをとる時に彫る彫り方で、イメージ的には下書きのような感じです。
彫金教室に通ってみようかな?と興味のある方は一度目を通してみるといい予習になりますよ。
それでは読む彫金教室始まり始まり
初心者の方が彫金の知識を増やすために役立つ電子書籍を用意しています。
読む彫金教室。毛彫りタガネ彫り方練習~筋彫り
前回の読む彫金教室は毛彫りタガネで爪を立ててそのあと魚子タガネで丸める方法をお伝えしました。
今回はタガネで模様を彫る時の全般に関係するお話で、かなり地味な彫り方についてのお話ですがスーパー実践的な内容です。
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筋彫り
・呼び方色々
今回の彫り方の名称なんですが、やる人によって呼び方が違います。
私が今まで耳にしただけでも「筋彫り」「ガイドライン彫り」「下書き(下彫り)」「慣らし彫り」と色々あります。ガイドライン彫りなんかはカタカナかよっていうね。
私は好きですけどね。
実際に私「ガイドライン彫り」で説明したりするし。
ネーミングの話はこれぐらいで、そろそろ説明始めます。
・地味だけど大事な彫り
簡単に言うとガッツリ深く彫る前に細くガイドラインになるものを彫ることをを指します。
「和彫りは下書きとかしないで一発で彫るのが売りなんだぜ!!」
そんな意見もありますし、筆者自身銅板・真鍮版だったり銀・金・プラチナは一発彫りがほとんどです。
デザインが複雑でアタリを付ける必要がある時にやります。
一番重要なのは宝石のを彫り留めする時、「筋彫り」をメッチャちゃんとします。
ずれると大体修正きかないので丁寧に下書きをする必要があります。
あと指輪の縁にミルをビッシリ入れる時などはマスト、やっておかないとおかしなことになります。
模様や絵を彫るうえで絶対的に必要なのはステンレス製のものを彫る時!!
もうねカッタイから!! ステンレスハンパないって!!
上等な時計(Rolex)とかゴルフクラブね。
一発彫りでやる方もいるみたいなんですけど、絶対ガイドライン彫りしましょう。
笑えるぐらい超硬タガネが欠けるので。
タガネが欠けてしまった時は市販のものを買い直しましょう。
自分で研ぐための方法を紹介していますが、独学で研ぎを覚えるのはかなりハードルが高いのでオススメしません。
本当にやりたい人は彫金教室で習いましょう。
彫金を基礎から独学でやってみたい方はこちらの電子書籍をご覧ください。
筋彫りをやる理由
筋彫りをやる理由は大きく分けて2つあります。
- 深く彫るにあたって当たりを付ける。
- 彫る対象の硬さを確認するため。
①の方が重要な理由です。
模様や絵を彫る時は全体のバランスを見ないといけないので下書き感覚で彫っています。
冒頭にも書きましたが宝石の彫り留めの時は必須の工程です。
②の理由は私の仕事上の工程の一つなのでこれを筋彫りをする理由にしているのは私ぐらいかもしれません。
硬さを確認するというのは全体的な硬さもそうですが製品の硬さにムラがあるか確認します。
アルミダイキャストで作られている工業製品は品質が一定なのですがゴルフクラブやアンティーク系の(ステンレスじゃない)物は金属の硬さが全体で一律じゃないものがほとんどです。
また製品の彫る箇所によって硬さが違ってくるものも多くあるため確認が彫金の依頼を受けた時は筋彫りをかなり大事にしています。
これは私の肌感覚ですが、多分他の方に聞いても同じ答えが返ってくると思います。
- ゴルフクラブは用途的に全体が同じ硬さじゃありません、フェース部分に近い部分ほど硬い。
- アンティーク系は時代的に合金技術が今ほど発達していなかったため、合金にムラがあったりします。
- ユーズドの金属製品で特に身に着けるものはあちこちぶつけたりしているので硬さにムラができています。
気にしないでに一発で彫ろうとすると彫っている最中にいきなりタガネが一気に進みすぎてしまったり逆に急に進まなくなったり、アンティーク系の場合彫っている対象自体が欠けたりする事がありますので気を付けてください。ステンレスを彫ってて急に固くなったな~なんてなった時はだいたいタガネ欠けます。
あとガイドライン彫りしている時に彫っている対象に合った叩くテンポと強さがなんとなくつかめます。
ちなみに叩き方は以前から言っている通り「持ち上げる叩き方」で、テンポがつかめたら少し振り下ろす力を加えて大丈夫です。
持ち上げる叩き方はこちらの記事で詳しく紹介しています。
硬い金属はタガネが欠けやすい
ステンレスを彫る時に「持ち上げる叩き方」をマスターしてないとあっという間にタガネが欠けます。
叩いた瞬間にタガネが横に滑るように跳ねたらまず間違いなく欠けてます。
私は急ぎの仕事の時にで振り下ろすパワー込み(一気彫り)で彫っていたらタガネが竹がパカッと縦に割れる感じで割れました。
ステンレスの硬さと叩く圧に耐えかねたんでしょうね。
私はステンレスを彫る時はこんな感じです。
時計は硬さ一律なのでそこまでムラがあるかどうかは気にしなくていいと思いますが一気に彫らない方がタガネの負担が少ないので何回かに分けます。
筋彫りの練習方法
筋彫りの練習は非常に単純で過去に紹介した直線を彫る練習とあまり変わりません。
0.5㎜の毛彫りタガネで真っすぐ狙ったところに刃を入れて均一に彫り進めて狙ったところで刃を細く抜ければできます。
以前紹介した線の彫り方と違うのはより細く浅く彫ることを意識するという事です。
文字で見ると簡単そうに見えますが初めは結構できません。
彫るというより掬う、捲る、剥くような感覚ですかね、がつがつ彫っているときのような金属の抵抗は感じないはずです。感じたとしたら同じ深さで彫れていないので叩く角度を意識して調整するといいと思います。
「筋彫り」に関しては丁寧に彫ることが彫るうえでの大元になります。
最初に書いていますが端折って一発で彫る事も多いので普通の模様彫りではやらない方がほとんどだと思います、単純な模様を彫るだけであれば私も省略します。
大事なのは全体のバランスをちゃんと取らないといけない時。
タガネは基本は毛彫りタガネを使いますが、片切タガネでも甲すくいタガネでも構いません。
というのも丁寧にキレイに仕上げるための下準備になるものなので最終的に仕上がった時に彫った跡はほぼ見えません。ミル打ちの時は溝が残るので見えますが通常は見えなくなります。
雑にやるとその後の作業がちゃんと仕上がらなくなりますのでやる方は丁寧の彫りましょう。
均一に線を引いてそこに浅く毛彫りタガネで必要な長さだけ彫りを入れます。
これを全体的なデザインを加味してあたりを付けるように浅く彫っていきます、毛彫りで深く彫っておいた方がいいじゃん!!という方はやらない方がいいと思います。
だいたい目算がずれて修正不能な毛彫りの線ががっつり入ることになる可能性が高いです。
今回の彫りは技術が云々というよりも全体のバランスを見る構成力のようなものの一部の彫りです。
読む彫金教室まとめ
しっかりとバランスをとる時、硬さを確認しながら慎重に彫る時に必要になる彫り方です。
趣味レベルの方であれば不要かもしれませんが「キレイに彫りたい」という事であれば練習して損はありませんし、浅くきれいに彫る力加減のちょうどいい練習方法です。
IMULTA(@imulta_jewelry)でした。
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