こんにちはIMULTA彫金師の上谷です。
独学で彫金を始めて15年たちまして現在はIMULTA(イムルタ)という自分のブランドを立ち上げて彫金師をやっています。
今回の読む彫金教室は「影彫り」。
彫った面の傾きによっての見え方の変化を利用した装飾方法です。
技術的な事よりも考え方が中心になります。
初心者の方が彫金の知識を増やすために役立つ電子書籍を用意しています。
![](https://choukinyorozu.com/wp-content/uploads/2023/06/40bc86a73961f6f90eeaf203f436285c-1024x538.png)
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読む彫金教室。彫り方刃の向き、影彫り
今回は彫金の彫り方、彫金タガネの刃の向きに関してです。
基本的に片切タガネ(片切彫り)についての話になりますが刃をどっちに傾けるかという話なので大体のタガネに当てはります。
あとこの考え方をしていると模様を彫っていく時にどのタガネで彫ると上手いこと彫れるか、自然と手が動くようになるので練習するなら考えるようにした方がオススメです。
では早速画像からご覧ください。
![刃の向きと傾きを変えた彫金の葉っぱ](https://choukinyorozu.com/wp-content/uploads/2019/01/DF2A03FD-ECB9-4317-A658-23B2AE7493F5-1024x768.jpeg)
コチラは同じ葉っぱを彫る時の刃の向きと傾きを変えた色んなタイプです。
ぱっと見でもわかる通り同じ絵でもタガネの刃の向きによって結構印象が変わります。
ちょっとデザイン的な内容を言うと葉っぱの先端を尖らせるかどうかだけでずいぶん印象が変わります。技術的にどっちが難しいということはないのであくまで好みです。
彫金の基本的な練習に関してはこちらの電子書籍を参考にしてください。
YOUTUBE動画で一緒に活用いただく内容になっています。
![](https://choukinyorozu.com/wp-content/uploads/2023/06/6cd4d773141491544725153c8ef4fe69-640x1024.jpg)
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片切タガネの刃を内向きに彫る
立体的に彫る
基本的にタガネの刃を内側に向けると立体的に見えます、ハワイアンジュエリーのプルメリアとかの花と葉っぱはこの彫り方です。
上の画像の刃を内側に向けた物もそうですが彫り跡の幅を太くするほどふっくらとした印象の模様を彫ることができます。
彫りの頂点を合わせる彫り方をハワイアンではダイヤモンドカットと呼びますが和彫りでは明確な名称がありません。
こちらの動画で筆者が便宜上「三日月彫り(山)」と呼んでいる彫り方になります。
![](https://i.ytimg.com/vi/6MR5Sj-Kb7E/maxresdefault.jpg)
模様の内側の角を丸める
私はあまりやりませんが彫った跡の角をシリコンポインターなどで強く磨くと角が丸まるのでさらにポッテリとした印象になります。
「彫り跡がだれる」と言って彫る人の中ではあまりいい印象を持たれない事もありますが、柔らかい雰囲気を持たせることができるのであくまで装飾の方法の一つとしてたまに使っています。
余談ですが今までいろんな人と打ち合わせをしましたが、なぜか彫金をやらない人ほど彫り跡がだれるのを嫌がるような気がします。
立体的に彫る方法はこちらの記事で別途説明しています。
片切タガネの刃を外向きに彫る
平面的に彫る
片切タガネの刃を外側に向けると平面的に見えます。和風な模様を彫る時はコチラが向いています。というか和柄を彫っているものは大体こちらの方法で彫ってあります。
外向きに彫る時は角が丸まるのはいいことがないので彫った後にリューターでは磨きません。布に研磨剤を塗って手で磨きます。彫った後の模様にさらに加飾するときは彫り筋と模様を荒らさないように加飾する必要があるので最初からデザインはしっかりと決めてから彫った方がいいです。
指輪に彫ると
彫金の指輪なんかを作る時は刃を外側に向けで深く彫ると模様が物理的に浮かび上がることになるのでそこにさらに角を軽く内向きに彫ると一気に模様に目が行くような彫り方ができます。
![彫金リング2](https://choukinyorozu.com/wp-content/uploads/2018/12/DSC_2154-1024x1024.jpg)
内向きと外向きを組み合わせて葉っぱを彫る
![彫金の葉っぱ](https://choukinyorozu.com/wp-content/uploads/2019/01/D6E0DA08-97C6-4F52-8B41-1B3BE5DE6E92-1024x768.jpeg)
葉っぱを彫る時に内と外の向きの彫金模様を組み合わせると葉っぱがどっちを向いているかを彫り分けることができます。
当然絵画的に効果線などを入れることできますが、今回紹介する内容は同じように彫ってモチーフの向きを変えるように彫る方法です。
刃の向きを外側を向けた方が奥に見えるようになります。
レリーフなどの光の当たる方向が一定の場合特に効果的ですが、指輪やネックレスなどの場合は身に着けた時に光が当たる方向が一定ではないので正直そこまで効果はないです。あくまで筆者の考えですが。
内向きと外向きを合わせて片方をV字の溝に彫るとめっちゃ強調することができます、彫金で指輪やネックレスを彫ってしっかりと模様を出したいときはこちらのほうがオススメです。もちろん模様の全体をV字に彫っても大丈夫です。
「あれ?V字に彫るなら毛彫りタガネでいいんじゃねーの?」
ごもっとも。
片切でV字に彫る時は溝の傾きを調整して彫りたいときです。模様のこの部分は深く、ここは浅く。傾きをそれぞれ調整したりY字みたいに彫ることもあります。
自分なりに彫り方を調整すると面白いと思います。
![彫金シルバーネックレス](https://choukinyorozu.com/wp-content/uploads/2018/04/IMG_57991-e1523805760729-768x1024.jpg)
あれこれ調整して彫ると浅く細く彫ってもこれぐらいの雰囲気に彫ることができます。
過去のブログで紹介した山彫りと波彫りは使うタイミングがなかなか難しい技術ですが、深さを調整して使えるようになっていれば狭い範囲でもあれこれ彫れます。
深さを調整して使えればというのは「深く彫らないとできない」という状態でなければという意味です。唐草模様の葉っぱをきれいに彫れていれば多分大丈夫。多分。
![波彫り組み合わせた葉っぱの彫金模様](https://choukinyorozu.com/wp-content/uploads/2019/01/E9D13C34-02B1-4A99-B836-D8E308072916-1024x768.jpeg)
波彫りと山彫りを組み合わせると上の画像のような葉っぱの模様が彫れます、めったに使わないけど。
大~きな模様を彫っているときにアクセントとして使うことができます、めったに使わないけど。
陰影を彫る(影彫り)
![陰影を彫る彫り方](https://choukinyorozu.com/wp-content/uploads/2019/01/502ED00D-3CE4-4DA4-86ED-9AD26B9D5716-e1546927429624-915x1024.jpeg)
陰影だけを彫って葉っぱや枝などを彫る方法もあります。
感覚としては水墨画を書くようなイメージ。
これは光の向きをそろえたりとあれこれ考えることはありますが完全に雰囲気勝負の方法なのでキレイに彫るというよりも余白を生かす方に意識を向けた彫り方です。
ここまで紹介してきたブログの内容だけでも練習してくると「時間をかけて、細かく丁寧にやってるんだからキレイ」のような間違った認識が生まれそうですが、実際は多少荒く彫る部分を混ぜた方が風情が出ます。
三日月を彫る練習の時のブログに書いてますが、彫った跡がツルツル・キラキラじゃない時の彫り方はこういった陰影を彫る時などに使い、彫り跡に残った横線を葉脈や陰影の効果線のように見立てます。
枝の節の部分は軽く山彫りをしながら跡が残るように荒く彫って強弱をつけると効果的です。
今までは線の太さと深さの強弱を付けることについてあれこれ書いてきました、今回はさらに彫った線のキレイさに強弱をつける彫り方です。
筆者は【影彫り】と呼んでます。
彫り方にいちいち名前を付けているのは、お客さんと打ち合わせしたときに名前を付けとかないと打ち合わせがいちいち止まるので業務上サクサク進めるために付けています。
それに「影彫り。」と言えばとりあえずは先方も「影を彫るんですね。」となるので、大体見てもらえば「あ~。」ってなります。
彫金の基本的な練習に関してはこちらの電子書籍を参考にしてください。
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読む彫金教室まとめ
立体的なら内向き、平面的なら外向き。陰影を彫る時は余白を意識して。
今回紹介した彫金の彫り方はどう見えるかを調整する方法なので今まで紹介したものと違って練習したからキレイにできるといった類の技術ではありません。
色んな方にお話を伺ってきましたが「これが正解。」と言った絶対的なものはないようです。
筆跡と同じように彫っていると自分の手癖が出てくるので自分の彫ったものの雰囲気に合わせて使い分けるのが正解だと考えています。
IMULTA(@imulta_jewelry)でした。
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