こんにちはIMULTAの彫金師の上谷です。
今回は彫金タガネを使った彫り方の中でも片切タガネの立体的な彫り方について書きます。
5年以上続けているおかげか、このブログを読んで彫金を始めてみたというお声をちょこちょこいただくようになってきました。
ただタガネの彫りとは言え彫金は固定に松脂など熱を使って柔らかくしたもので固定することも多いです。
油断すると火傷など深いケガをするので気を付けて行ってください。
今回紹介する彫金方法は模様を立体的に彫る彫金の基本的な技法の一つになります。
行う事自体は簡単ですが組み合わせでいくらでも使いどころがあるので色々試してみると見え方が変わって面白いと思います。
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【片切り彫り】彫金タガネの彫り方練習~立体彫り
片切タガネに特化した話になりますが、彫る時に刃をどっちに向けているかで見え方がだいぶ変わってきます。
彫る際に片切りタガネの傾きを絵の内側に向けて彫ると模様が立体的に見えるように彫るのが立体彫りです。
ただ「線が細い、深さが浅い」彫り方で立体的に見せるとなると周りにどんな線を彫り入れるかという総合的な彫金の考え方が必要になるので、基本的にはしっかりと「線を太く、深く」彫るのがポイントになります。
実際に立体彫りを組み合わせるとこの動画のような絵を彫ることが出来ます。
平面に彫っていますがキャラクターの絵が浮き上がって見えると思います。
掲載している文豪ストレイドッグスの芥川龍之介の画像はあくまで例です。
練習段階で画像のような彫ろうと意識する必要はありません。
片切りタガネと毛彫りタガネのどちらを使っても立体的に彫る事は可能ですが両方の長所を組み合わせるとより立体的に彫る事が可能になります。
下の絵はほとんどを片切りタガネで彫っています。
ちなみにキャラクターはツイステッドワンダーランドのリリア・ヴァンルージュです。
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片切り彫りとは? その特性を理解する。
では実際に片切りタガネを使って銅板などを彫った時にその線はどのように見えるでしょうか?
最初にこれを認識しておくと片切りタガネの使い方の意識が全く違います。
専門学校や教室で習ったことがある方や多少彫金の本をご覧になったことがある方ならご存じだと思いますが、片切り彫りはいわゆる筆に例えられることが多い彫金タガネです。
毛彫りタガネや丸毛彫りと違って片切りタガネは先端が平らなので、彫る時は基本的に左右どちらからに傾けて彫ります。(※鋤彫り・はつりを除く)
その傾き次第で線の太さが変わるので毛筆の筆の腹を使った付立(つけたて)の画法と似ているからともいわれます。
つまり彫る時の片切りタガネの傾き次第で同じように絵の見え方が全く違ってくるという事です。
片切りタガネで有名な江戸時代末期の金工師の加納夏雄は片切り彫りを得意とし、その表現方法を確立したというのは有名な話です。
片切り彫りを筆を運ぶ動きに例えるのであれば筆の先端にあたる部分ほど深くなり、筆の腹にあたる部分ほど浅くなります。
どのように使うかで書き順は検討しなくてはいけませんが、片切り彫りは文字を彫ることにも適した彫り方です。
ここまでの解説でわかる通り、例えば葉っぱがどっちを向いているように見えるかなど傾きを調整することで、絵の向きを調整して立体的に見えるように彫るのが片切りタガネを使った立体彫りの仕組みです。
片切りタガネの立体彫りを上達するための練習やり方
立体彫りをするためには片切りタガネの刃の幅を自由に使えるようになる必要があります。
深く彫って刃の幅いっぱいに彫るというのは普通に考えられることですが、深く刃を入れずに刃の幅いっぱいに彫る練習も必要です。
形をキレイに彫るとかそういうことはこの練習ではどうでもいいので、最初はとにかく広く彫る練習をします。
浅く広く彫る彫り方が身につけば、深く広く彫る彫り方は自然とできるようになっています。
上の画像の銅板のように広く彫る練習を繰り返しましょう。
するとタガネを一定の深さで彫る方法も強制的に身に付きます。
こちらの動画は波線を彫る練習方法を紹介していますがその中で刃先を広く彫る練習方法についても紹介しています。
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片切り彫りを深く広くきれいに彫るにはしっかりとした固定が必要
彫金を行う時点で彫る対象の固定はしっかりとしておかないといけません。
しかし繊細な彫りをするのと比べて力強く深く彫るにはよりしっかりと固定する必要があります。
ホームセンターで売っているバイスや万力でも構いませんが、これからしっかりと練習するという方は彫金台の重いものを使うことをオススメします。
またヒートクレイや松脂でしっかりと固定するなど、彫刻台に留めるものも彫りやすくなるかどうかに関しては非常に重要です。
立体彫りは毛彫りタガネを使ってもある程度できる。
過去の投稿でも書いているのですが毛彫りタガネと片切タガネは彫る時の傾きを調整することで結構同じように使えます。
つまり今回の彫り方は毛彫りタガネでもできます。
ただ彫った時のキラキラになる「照り返し」が毛彫りタガネの場合彫った面の内と外の両方にできるので調整するのが難しくなります。
片切タガネの場合
片切タガネで彫った場合、彫った時「レ」の形に彫れます。
「レ」の縦棒の部分は彫った時にバリが離れていくだけなので「照り返し(彫った面がキラキラする状態)」ができません。
その結果キラキラした「照り返し」の部分にだけ目が行くので立体的に見せるための視覚効果が十分に発揮されます。
毛彫りタガネの場合
毛彫りタガネの場合、彫った時「V」の形に彫れます。
毛彫りタガネは彫った「V」の両面がキラキラするのが基本なので、細かく模様を彫りこんでいくと最終的に全体がキラキラの「照り返し」だらけの状態になるのでどこを立体的に見せたいのかがわかりにくくなります。
そのため調整が必要になるので慣れないうちは毛彫りタガネで立体彫りの練習をしない方がいいです。
どうしても毛彫りタガネを使いたい場合の簡単な解決方法としては、「V」をものすごく鋭角にした毛彫りタガネを使うか、刃の片方をキラキラしないように荒らしておく方法があります。
どちらにしてもタガネを研ぐ技術が必要になってくるので、そんな苦労をするぐらいなら素直に片切タガネで練習した方が楽だし上達が早いです。
あくまでお好みなのでどうしてもやってみたい方はどうぞ試してみてください。。
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彫金の絵画的な要素
彫金タガネを使って模様を彫っていくので絵画的な陰影の表現も使えます。
陰影線を交差させるまで行くとちょっと「照り返し」のキラキラがうるさくなるので、その場合はキラキラしない荒らしたタガネを使うか、模様を黒く染めるために「墨入れ」します。
ただ私の場合「墨入れ」はあまり行わないのでそこまで陰影線を引きません。
大体は線の太さと彫る線の深さで奥行きを表現してます。
※彫るもの時計に彫るとか彫金する対象によっては墨入れする必要があるものもあるので絶対に墨入れしないという事ではありません。
今回紹介した立体的な彫りで「深く、彫りの傾きを調整して!!」という練習をたくさんすると驚くことに浅く繊細な線を彫るのがちょっと苦手になってしまうことがあります。
これは「深く彫る、傾きを調整するために彫りの途中でタガネを捻る」という事に意識が行き過ぎて「押し彫り」を無意識にしてしまっている可能性が高いです。(経験談)
ついでに書いておくと繊細な線を彫る時は彫る方向に力が入ってはいけないので(刃先を安定させる程度には力が入っていてもOK)タガネを叩かない限り刃先に力が加わらないように「留め彫り」することを意識するといいと思います。
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【片切り彫り】彫金タガネの彫り方練習~立体彫りまとめ
- 平面で立体的に見せる彫り方をしたい時は片切タガネを使いましょう。
- ちゃんとやってみたい人は彫る前にデザインに「どの方向に彫るか」を書き込みましょう。
- 毛彫りタガネでの練習はオススメできません。
- 深く彫るばかりじゃなく繊細な彫りも練習しましょう。
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彫金の彫り以外の作業に使用する基本的な工具に関してはこちらの記事をご覧ください。
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