こんにちは彫金師の上谷です。
今回の読む彫金教室は「彫金をやってみたい。」と思ったものの、道具は何があったらいいかわからない人向けに彫金で使用するリューターとリューターに着けて使用する先端工具を紹介します。
そもそも
リューターってなに??
先端工具ってなに??
という方ももいると思うので順番に説明していきます。
※今回はリューターと先端工具の紹介なので「机」とか「糸鋸」は紹介しません。
彫金で使用される基本的な工具はこちらからご覧ください。
【プロの彫金師がオススメする彫金工具!】初心者用から専門的な道具まで紹介
手作業のハンドメイドにお手ごろな機械工具のリューターと先端工具を取り入れる編です。
彫金に使用するリューターと先端工具を選ぶときのポイント。
早速ですが「工具屋に行ったもののどれを買っていいか分からない。」はあるあるです。
しかし彫金でアクセサリーやジュエリーを作る方法は色々とありますが、金属加工の彫金だろうやロストワックス製法(鋳金)、どちらの場合でもリューターはあった方が圧倒的に効率的に作業が進みます。
アートクレイシルバーの作業にも便利なので、ハンドメイドでアクセサリー作りをしている人は全員持っていると言っても過言ではありません。
彫金で使用するリューターとは

リューターはミシンのようにフットペダル(バリアブルフットコントローラー)を踏むと先端工具が回転する工具です。
フットペダルがなくても動きますが、回転数を踏み込む具合で変えられるので通常はフットペダルを使います。
ミシンのようなものだと思えば問題ありません。

↑これがフットコントローラー。
多分フットコントローラーを使っていない人はいないと思いますが、もし使いたくない場合はフットコントローラーを外すか後ろにあるスイッチをオフにすればフットコントローラーが使えない状態になります。

↑右がフットコントローラーで左が手動
先端工具を付け替えるハンドピース

この画像はロールサンダー(巻いてある紙やすり)を付けた状態。
ロールサンダーの場合は金属の表面を削るために使用します。
このように先端工具を着ける部分をハンドピースといい、用途に合わせて色々な先端工具を付け替えます。
リューターを買うとハンドピースはセットでついてきますが、壊れた時に個別に購入することも可能です。
ハンドピースの超注意点

ハンドピースは差し込み口に口径を合わせる筒(コレットチャック)がついています。

中の筒(コレットチャック)は抜けるのでこれを失くしてしまったり壊してしまうと使えなくなります。
先端工具を抜いたらくっついてて一緒に抜けてたというのがよくあるトラブルです。
あと挿し込む先端工具の棒の部分が錆びていたり汚れがついている時に面倒くさがって無理に差し込むと抜けなくなるので気を付けましょう。
錆びは水に半溶かしした重曹で擦れば取れます。
重曹の使い方はこの記事で紹介している方法と一緒です。
真鍮アクセサリーの簡単お手入れ方法、重曹で青錆をキレイにする
先端工具を選ぶときのポイント
リューターに取り付ける先端工具は「どんな作業をしたいか?」によって必要な道具が変わってきます。
・リューターで出来ること
- 削る
- 磨く
- 穴を開ける
まずは自分が何をやりたいかを確認しましょう。
この3種類以外に鋳造後のシルバーのス埋めをする先端工具などもありますが、とりあえずはこの3つが基本的な使用用途です。
彫金(模様を彫る事)のみをやりたい方は先端工具はあまり関係ないので彫金に関して紹介した記事をご覧ください。
彫金で使用するタガネや彫りについての紹介をしています。
リューターを使って彫金作業の何をやりたいか??を考えておくと選びやすい
先端工具は膨大な数があるわりに、ネットショップで商品説明がなんも書いてなかったり専門用語だらけで何に使うか分からなかったりします。
彫金独学組で始めてシーフォースなどの工具屋さんに行った人は「これって何に使うんだろう?」状態になります。
というわけで用途別にご案内します。
その前に前提としてリューターの先端工具のポイントから
【前提】先端工具をアレコレ使ってると分かってくるポイント
- 用途が1つしかないモノと工夫次第であれこれ使えるものがある。
- メインの用途を分かって使わないとあっという間に傷んで使えなくなる物もある。
- お手入れが可能なものとそうでないものがある。
- 取り敢えずグリグリ当てればいいってもんじゃない。
- あれ?これって安いの何本も買うより高いの1本買っておいたほうが良くない?
これを知っているだけで、かなり無駄遣いが減らせますし、最も自分の希望に合った先端工具を買うことが出来ます。
例:丸型(ラウンド)のスチールバー
まず代表的なのが丸型(ラウンド)のスチールバー↓
・ラウンドスチールバーの用途
- 皿もみをする(宝石を留める穴を作る)
- 全体的な形を削る造形に使える
- 削って模様を入れられる
- 切れ味が落ち切ったものは窪みを磨ける
- 頑張れば穴もあけられる。
これだけ用途があります。
メインは「皿もみをする」、宝石を留める時に使います。
ただ金属造形&装飾にガシガシ使っている人もたくさんいるので「皿もみがメインだよ。」っていうのは私の個人的な意見です。
石留めしない人は「皿もみ」自体行わないですからね。
ただ一般的なスチールバーはガンガン使っているとすぐに切れ味が落ちます。
※上の画像の左は超硬のものなので結構長持ちします。
皿揉みに使っているだけであればそれほどですが、金属造形に使うとなるとあっという間に切れ味がなくなるのと大きさ自体がちょっと小さくなります。
金属をガシガシ削りたいのであれば超硬のロータリーバー、またはカーバイトバーを使った方が作業効率もいいし摩耗しません。

スチールバーと比べてお値段はしますが、超硬のロータリーバー・カーバイトバーは削る作業に特化した先端工具なので切削面もスチールバーで削るよりキレイで仕上げが簡単です。

ラウンドカットのスチールバーをはじめ、刃がたくさんついているような先端工具は研ぎなおせないので基本的に買い替えで使い捨てになります。
結果、安いものよりちょっと高価なものを買った方が長持ちするし作業効率も上がるという事になります。
切れ味を維持するためにはラスペネにような切削の補助になる油を挿すのオススメです。
またワックスモデリングの場合は金属製の先端工具で削っていくと工具が熱を持ってしまい、溶けたワックスが目詰まりを起こすので、ジルコニアで出来た先端工具を使います。
ここまで紹介した先端工具は金属をガリガリと削るタイプのもので、本ページの最初の方に画像でお見せしたロールサンダーはガリガリと削った後の微調整や、だんだんと目の細かいものに変えて磨く下準備をするために使用します。

このように「削る」という工程だけでも選び方が色々と変わってきます。
最初から全部の先端工具の使用方法を理解するのは難しいので、色々と使いながら覚えていって必要になったものを追加で購入するという流れになります。
リューターで使用する先端工具の中で削る作業に使う物に関してこちらをご覧ください。
磨く系の先端工具、バフ

リューターを使用するとシルバーアクセサリーなどを簡単に鏡面磨きにすることが可能です。
画像の「バフ」という先端工具に研磨剤をつけて使用します。
左のものが新品に近いもので研磨剤をつけて繰り返し研磨作業をすると右のように真っ黒になります。
最後は超音波洗浄機などにつけて洗浄し研磨剤を除去します。
※研磨剤は「青棒」などホームセンターでも売っている物も使います。
このバフでの研磨作業は特にリューターのパワーが重要になるので本記事で紹介しているリューター程度のパワーは必須になります。
パワーが足りないと回転が途中で止まる(または弱まる)ので研磨剤がこびりついて逆に汚くなるので気を付けましょう。
研磨剤のも色々な種類があり状況によって使い分けることで適切に磨き上げることが出来ます。
鏡面磨きだけが正解の磨き方ではなく、それぞれの用途に適した先端工具と研磨剤を使用する事が必要になってきます。
例えば私の仕事で言うとzippoのような日用品の彫金の場合、鏡面磨きにしてしまうと汚ればかり目立つようになるので多少抑えます。
磨く系の先端工具に関してはこちらをご覧ください。
削ると磨くの両面使いの先端工具、シリコンポイント

削ると磨くの両面で使えるのでシリコンポイントは非常にオススメです。
粗いものは金属でも削れ、目の細かい物であれば鏡面磨きまで行けます。
慣れるまでは少し時間がかかりますが、初心者の方や趣味でササッと磨きたいぐらいの方であれば研磨剤の使い方を考えなくていいシリコンポイントを揃えた方が間違いなく楽です。
穴を開ける工具、ドリル

一般的な電動ドリルと同じように先端に色々な大きさのドリルをつけて穴を開けることが出来ます。
ドリルで金属に穴を開ける上で必要になるのが作業用オイル(超重要)。
穴を開ける作業中に起きる摩擦熱が先端に集中するので適当に使うとあっという間に切れなくなります。
- スチール
- ハイス鋼
- 超硬
- ダイヤモンドドリル
ドリルにはこの4種類があって穴を開ける材質によって使い分けます。
硬い天然石(モース硬度7以上)に穴を開けたいという人はダイヤモンドドリル一択になりますが、基本的な金工は上の3種類で充分作業する事が出来ます。
ダイヤモンドドリル以外は作業用オイルとしてラスペネ推奨。
各種ドリルについてはこちらで詳しく解説しています。
またドリル、穴あけ作業に関して特に質問が多い「ハーキマーダイヤモンドの穴あけ」に関してはこちらで解説しています。
ただこの作業をリューターを扱ったことがない方、これからハンドメイドを始める方が行うのは現実的ではないのでモース硬度7以上の天然石の穴開けは業者に頼むことをオススメします。
一応やり方は載せているので興味のある方は試してみてください。
リューターのパワーが大事
今回私が紹介したリューターはプロも使用している強力なパワーを持ったものです。
お値段がそこそこするので敬遠する人もいますが、安価なリューターは頻繁にオーバーヒートを起こすので私はお勧めしていません。
特に銀板や真鍮版などの金属(地金)を加工するにはそれなりのパワーがないと負荷に耐え切れずに回転数が落ちてしまい、最悪止まってしまうので安定した作業ができません。
その結果作業効率が落ちるので、いい先端工具を使っても使いこなせず結局損をします。
作業する量にもよりますが、オーバーヒートが多いとストレスが溜まって作業自体が億劫になってくるのでケチらないことをオススメします。
【2020年版】彫金用リューターと先端工具を選ぶポイントまとめ
今回はリューターの先端工具を選ぶときのポイント「こういう考え方で選びましょう」という考え方と削る・磨く・穴を開けるの工程を簡単に紹介しました。
普段作業工程を紹介する記事の場合「作業の仕方は人それぞれ。」と書きますが、先端工具の選び方、選ぶ時の考え方は今回紹介した方法以外ありません。
彫金教室に通っている方は講師の方に勧められたものを唯々諾々と買っていると思います。
ただ工具もドンドン新しいものが出ているので自分で試してみるのをオススメします。
特に今回例に挙げた「スチールバー」と「カーバイトバー」の性能が桁違いであるような例はいくらでもあるので、自分に合った工具はちゃんと自分で探しましょう。
IMULTA(@imulta_jewelry)でした。
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