こんにちは彫金師の上谷です。
彫金を始めて15年たちまして現在はプロの彫金師としてご飯を食べています。
さて今回の「読む彫金教室」はシルバーアクセサリーのリングの作り方を紹介します。
過去の記事で安価な値段で手に入る真鍮を使った指輪の作り方や彫金の技法をあれこれ紹介しているので改めて「シルバーアクセサリーの作り方」という書き方はしてこなかったのですが、
- 真鍮とシルバーのアクセサリーの作り方は一緒でいいのか教えてほしい?
- シルバーアクセサリーはシルバーアクセサリーで作り方をブログに書いてほしい。
と言ったリクエストがTwitterとインスタであったのでこの記事を書いてます。
これからハンドメイドを始めようという方は真鍮以外のゴールドフィルドやシルバーを使用するうえで、金属の特性上のメリット・デメリットをまとめたこちらの電子書籍をご覧ください。
またタイトルに「彫金」とあるように今回は地金(金属板)を加工する方法の紹介です。
ワックスを使ったシルバーアクセサリーの作り方はこちらの記事で紹介しています。
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【簡単なシルバーアクセサリーの作り方】彫金でシンプルな指輪を作る。
- すり出しシルバーリング製作に使用する工具と材料
- すり出しシルバーリングの作り方解説
- ヤスリで削って造形する。
- すり出しシルバーリングを磨く
- 簡単なシルバーアクセサリーの作り方・彫金で指輪を作る。まとめ
- シルバアクセサリーの作り方の記事リンク
さて今回の読む彫金教室はすり出しのシルバーリングの作り方の紹介です。
過去の真鍮の鎚目リングの記事にも書いてますが技術としては真鍮もシルバーアクセサリーも一緒なので今回の作り方を利用して真鍮のすり出しリングを作ることも可能です。
慣れてしまえばそこまで時間はかかりません。
ただ、大事なポイントは「ゆっくり作る事」です。
せかせか作るとケガしやすくなります。
楽しく読める程度のケガについてはこちらの記事で紹介しています。
ケガとは切っても切れない彫金作業での痛かったエピソードまとめ
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すり出しシルバーリング製作に使用する工具
今回使用する工具を紹介します。
- 糸鋸
- サイズ棒
- ヤスリ スリだしリングはヤスリで削って成形するリングなのでヤスリが重要です。
- ガスバーナー
- ゴムハンマー・または木槌
- フラックス
- ディクセル
- 紙やすり
そのほかの彫金に使用する工具は過去に紹介した記事をご覧ください。
【プロの彫金師がオススメする彫金工具!】初心者用から専門的な道具まで紹介
紹介している道具全てが必要なわけではありませんが、持っておけば大体の作業は出来ます。
ご自身で「これ必要かも」と感じたものをちょっとずつ買って、本当に必要であればさらに買い足すのをオススメします。
材料
- 銀板(厚さ1㎜)
- 銀ロウ
すり出しシルバーリングの作り方解説
- 指輪にするシルバー(銀板)の切り出し
- 切り出したシルバーをなます(熱してから急冷する)
- なましたシルバーを曲げてリング状に丸めていく
- シルバーリングの両端をすり合わせる(くっつける板の端と端を合わせる)
- すり合わせたシルバーリングをロウ付けする。
- ロウ付けが完了したシルバーリングの縁をヤスリで削る
- ヤスリで削ったシルバーリングの縁を紙やすりで整える
- シルバーの平打ちリング完成
では、すり出しシルバーリングの作り方を手順ごとに解説していきます。
各項目ごとにポイントになる部分と使用する工具を紹介しているので参考にしていただければ幸いです。
指輪にするシルバー(銀板)の切り出し
1㎜の厚さの銀板から糸鋸を使って大体で切り出してください。
幅が広すぎると後で真鍮板を曲げる時に大変なので、幅は最大でも3mmぐらいで切り出します。
長さは号数によって変わります。
では今回は9号という事で長さは53㎜ぐらいで切った後に両端をちょっと削るといい感じに9号ぐらいです。
糸鋸の詳しい使い方はこちらの記事をご覧ください。
材料になるシルバー(銀板)の長さや幅を指定して購入できる業者であれば、リングの希望サイズに合ったシルバー(銀板)を最初から購入できます。
シルバーの切り出しの工程を省いてより簡単にリング作りが出来るのでオススメです。
※最近はハンドメイドの流行もあるので小売りをやっている金属屋(地金屋)さんも増えてきてます。
切り出したシルバーをなます(熱してから急冷する)
加工しやすいようにガスバーナーで赤くなるまで熱してから水に入れて急冷します。
真っ赤になるまで熱していいの??
ダメとは言いませんが、あまり長時間熱するとシルバーの表面が荒れてくるまたは溶けてしまうのである程度赤くなったら水に入れましょう。※薄い銀板の場合は特に溶けやすいので注意が必要です。
この「なまし」の工程を行ってもシルバーが硬い場合はちゃんとなませていない(なましが足りない)という事になります。
ただ硬かったらもう一回なます工程を行えばいいだけなので、溶かしてしまわないように気を付けてください。
シルバーを購入する業者によっては「ソフト加工(なましてある)」の状態で購入することが出来ます。
ソフト加工の状態はなましてある状態なのでなます工程を省くことが出来ます。
サイズを指定して購入することが出来る業者の場合は業者側から聞いてくると思います。
逆にシルバーの表面をちょっと溶かして表情を出す。
今回紹介するすり出しリングでは行わない方法ですが逆に強く加熱してなますついでに表面を溶かすのもテクニックの一つで、以前紹介したレティキュレーション(網目模様加工)がこれに該当します。
強い火を使う事が条件になるので行う方はくれぐれも火事に気を付けてください。
レティキュレーションのやり方に関してはこちらの記事をご覧ください。
なましたシルバーを曲げてリング状に丸めていく
画像は真鍮ですが行う事は一緒です。
なましが完了したら硬い棒に押し付けて曲げます。(サイズ棒を持ってると便利。)
写真を見ていただくとこの時まだ板の両端が真っすぐなのでゴムハンマー、または木槌で両端を叩いて丸めます。(集合住宅の場合は騒音対策としてゴムハンマー推奨)
そうすると画像の感じで真鍮板がリングっぽく丸まっていきます。
↑ちょうどいいゴムハンマーとセットのものがあったのでこれおすすめです。
今回のサイズ棒にグニッと指で押し付けて曲げる作り方は、板の厚みが1.2㎜までの場合簡単にできます。
それ以上はちょっと硬くなってくるので手で曲げるのはシンドイです。
最初に書きましたが板の幅があるとそれだけ曲げにくくなるので程々にしましょう。
(※無理に手で曲げようとするとケガするので気を付けてください。)
シルバーアクセサリーを木槌で叩く場合の注意点
シルバーリングを作る時だけでなく、しっかりとなました後のシルバーを木槌で叩く場合あまり力任せに叩くと思っている以上に変形してしまいます。
リングの場合はリング状に丸める過程で両端がつぶれてしまう可能性があるので丁寧に叩く必要があります。
シルバーの場合は特にゴムハンマーがオススメです。
ゴムハンマーは普段のDIYにも使える上に安いので1本持っておくと非常に便利です。
木槌で金属を叩く場合は結構大きな音が鳴るのでご近所トラブルの素になります。
ゴムハンマーは作業音が静かなのでゴムハンマーで出来るものはゴムハンマーでやりましょう。
指輪作りに特化した工具
リングの成形は成形プライヤーがあるとあっという間にできるのでオススメです。
木槌で成形すると結構大きな音が出るのでマンションで作業している方はゴムハンマーを使うか成形プライヤーで曲げるかしましょう。
これは金属板や金属線を挟んで握りこむとリング状に曲がるヤットコです。(※成形プライヤー)
前に紹介した記事で「彫金の成形の工程は作業に合った工具を使うといい」と書いたのですが、真鍮アクセサリーでもシルバーアクセサリーでもリング作りをする時にこのヤットコを持っているととても楽です(ちょっとお高い)。
シルバーリングの両端をすり合わせる(くっつける板の端と端を合わせる)
シルバーの板をリング状に丸めていったらゴムハンマー・木槌などで叩いて両端をぴったり合わせます。
このぴったり合わせるのを「すり合わせる」と言います。
叩いた結果、シルバーの板が捻じれて合わせる面が傾いているときはヤットコ(無かったら先細のペンチでも可)を使ってグニッと捻りましょう。
結構大事な工程で「合わせた隙間から向こう側が見えない」感じになったらいいんですけど大体でいいです。
とりあえずどんな感じがやってみてください。
ヤットコでグニッと曲げる時に直でシルバーを掴んで力を入れるとシルバー自体に傷が入ったりへこんだりするので革の端材などを緩衝材として一枚かませましょう。
ホームセンターで売ってる薄い緩衝用ゴムでも出来ます。
ただ緩衝用ゴムの場合あまりグリグリやると色写りする事もあるので要注意。
これはシルバーでも真鍮でも一緒ですが、しっかりなましたシルバーは真鍮よりもはるかに傷が入りやすいので気を付けましょう。キズが入ったシルバーを直すのはとてもめんどくさいです。
すり合わせたシルバーリングをロウ付けする。
すり合わせたシルバーをロウ付けしてリングにします。
ロウ付けの簡単な手順
- すり合わせたシルバーの合わさった部分にフラックスを塗る
- 銀ロウを乗せる
- ガスバーナーで熱する
- ディクセルの溶液に入れる
ロウ付けの道具や、詳しいやり方はこちらから
【彫金アクセサリー】自宅でできる金属のロウ付けのやり方と道具を解説!
火事になっても私(上谷)とIMULTAの関係者は一切の責任を取りません。
板状のロウ材をハサミで切った銀ロウ(5分ロウ)を使用します。
リングのすり合わせ面の上に載っているのが銀ロウです。
この写真はすでにフラックスが塗ってある状態なのでガスバーナーで熱していきます。
ロウ付けが終わると画像のようにくっつきます。
ろう付けの後はフラックスを取らないといけないのでディクセルの溶液に浸けます。
※「フラックスとディクセルって何ぞや?」という方は【彫金アクセサリー】自宅でできる金属のロウ付けのやり方と道具を解説!を読んでください。
これ溶液の中でして、普段はこんな白い粒がある状態では使いませんが(普段は全部溶けてるのでパッと見ただの水です。)写真がわかりづらかったので粉の状態のディクセル(商品名:ピックリングコンパウンド)を「追いディクセル」してあります。
真鍮と違いシルバーの場合はディクセル溶液に入れっぱなしにしても白くなるだけです。(2.3日なら大丈夫)
ただ繰り返し使用したディクセル溶液の場合は黒ずんでくることもあるのでどちらにしてもしばらくしたら取り出しましょう。
▼動画で見たい方はこちらからご覧ください。
ロウ付けが完了したシルバーリングの縁をヤスリで削る
シルバーリングを円形に叩いて整えたら縁の部分をヤスリで削っていきます。
ヤスリはあまりギュウギュウ押し付けても効果的に削れないので押し付けるパワーで削ろうとするのではなく行ったり来たりする動きを増やすイメージで軽く押さえて使うと早く削れます。
※削りたいものが万力でぎゅうぎゅうに固定されていたりと力が逃げない状態であれば押し付けたほうが削れますが、アクセサリーの場合は万力で固定してあるようなことはありません。
強度を考えずに力任せに削ろうとすると変形・破損につながるのでお気を付けください。
下の動画は薄い真鍮板から模様を切り抜いた後の整え方、削り方・工具について紹介しています。
ヤスリで削ったシルバーリングの縁を紙やすりで整える
※今回はすり出しリングなのでこの工程は一番最後に持ってきても問題ありません。
金属のヤスリで削った縁やリング表面の傷を消していきます。
目の粗さは#240ぐらいの紙やすりがいい感じに傷を消せます。
段々と目の細かい紙やすりに変えていく事で最後の磨き作業が楽になります。
シルバーの平打ちリング完成
紙やすりで磨いた後に研磨布で磨けばかなりきれいに仕上がります。
こういったリングを「平打ちリング」といいます。
以下の項目をタップするとスクロールが可能です。
- 指輪にするシルバー(銀板)の切り出し
- 切り出したシルバーをなます(熱してから急冷する)
- なましたシルバーを曲げてリング状に丸めていく
- シルバーリングの両端をすり合わせる(くっつける板の端と端を合わせる)
- すり合わせたシルバーリングをロウ付けする。
- ロウ付けが完了したシルバーリングの縁をヤスリで削る
- ヤスリで削ったシルバーリングの縁を紙やすりで整える
- シルバーの平打ちリング完成
ヤスリで削って造形する。
ここからが今回の本題です。
さて前段落まででプレーンなシルバーのリングが出来ました。
ここからヤスリを使って造形していきます。
細かな造形をする場合は小さなヤスリが必要になります。
画像の一番左のヤスリは0.8Φのマイクロヤスリでかなり細かい造形が出来ます。
ただ初めて作る方は細かすぎると疲れてしまうので大きなヤスリでザックリと作ることをオススメします。
人によってはマジックで印を付けて正確に削ることを推奨している方もいらっしゃいますが趣味レベルであれば大まかに作った方が気分良く作ることが出来ます。
もししっかりとしたデザインをしてから削りたいのであればカニコンパスやスプリングコンパスを使ってください。
すり出しシルバーリングを磨く
ザックリした雰囲気のリングが好みであれば大まかに削りだしを行って終了となります。
キレイに磨き上げるのであれば大きく削りだした後に前述した紙やすりでの傷消しを行います。
・最終的な磨き方は2通り
- リューターやグラインダーのような機械工具を使用する方法。
- 液体コンパウンドなどを使用して手作業で磨き上げる方法。
当然ながらリューターは少し値の張る工具です。
グラインダーは安価で手に入りますが集塵機が必要になるので一般家庭で使用するのは現実的ではありません。(部屋が粉じんまみれになっていいのであれば使えます。)
リューターを使用した場合、シリコンポイントやバフといった工具を合わせて使用します。
使用方法についての詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
・シリコンポイントの使い方
・キレイに磨く段取り
・シルバーアクセサリーをしっかり磨く方法と簡単なお手入れの知識(手作業での磨き方メイン)
簡単なシルバーアクセサリーの作り方・彫金で指輪を作る。まとめ
基本的に彫金はゆっくり作ることがコツです。
今回紹介したスリ出しシルバーリングの作り方は時間をかければかけるほどキレイに仕上げることが可能になります。
効率的な製作が希望であればリューターなどの機械工具が必要になりますが手作業でも問題はありません。
本記事内でも小ネタとしてサイズを指定した銀板を購入するといくつかの工程を省いて製作できるので興味のある方は業者に直接問い合わせてみることをオススメします。
ただ業者によってはとても感じの悪いおっさんが電話を取る可能性があるので心を強く持ちましょう。
IMULTAでした。
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読み直し用リンク↓
- すり出しシルバーリング製作に使用する工具と材料
- すり出しシルバーリングの作り方解説
- ヤスリで削って造形する。
- すり出しシルバーリングを磨く
- 簡単なシルバーアクセサリーの作り方・彫金で指輪を作る。まとめ
- シルバアクセサリーの作り方の記事リンク
製作したシルバーアクセサリーを黒く燻す方法はこちらの記事をご覧ください。
これからハンドメイドを始めようという方は真鍮以外のゴールドフィルドやシルバーを使用するうえで、金属の特性上のメリット・デメリットをまとめたこちらの電子書籍をご覧ください。
IMULTA(@imulta_jewelry)でした。
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